「新年初遊び」
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「羽根つき?」
「あぁ。日本では、正月には『羽根つき』という遊びをして過ごすそうだ」
そういってイドルフリードが持ってきたのは、なにやらおかしな形の板二枚と、羽のついた黒豆のようなもの。板の方は、フライパンを平たく伸ばしたような妙な形をしているけれど。『羽根つき』、という名前を考えると、もしかしてあれであの黒豆をつくのだろうか。とコルテスは首をかしげる。
「さっそくやるぞコルテス!」
「いいけど…着物もちゃっかり着込んだり、おまえ何気満喫してるよな、日本の冬」
「悪いかい?あ、ちなみに。羽根つきは、負けると罰ゲームがあるからな!」
「罰ゲームぅ?んだそれ」
「ふふん、あとで教えてやろう!」
得意満面の笑みで、イドルフリードがゲームの説明を始める。といっても、予想通り、あのおかしな形の板―羽子板で羽をつくだけのものだったけれど。
「ふふっさぁ、始めるぞ!」
嬉しそうに羽子板を構え。
カコンッ
コルテスめがけ、羽根が鋭く打たれる。思ったよりもスピードのあったそれに驚き、思わず避ける。と。
「あははっ私の勝ちだな!」
ぽとりと地面に落ちた羽根を見て、イドルフリードが至極うれしそうにガッツポーズをし。懐から。
「…イド」
「さぁ、負けてしまったコルテス君には罰ゲームだぞ!」
「ちょっとまてイド!懐から取り出したそれはなんだ!!」
イドルフリードが懐から取り出したそれ…墨汁の入った小瓶と筆を見てコルテスが後ずさる。それをうれしそうに追いかけながら、説明してあげる。
「これかい?羽根つきで負けた者は、罰ゲームとして、これで顔に落書きされることになっているんだよ」
「先に言ええええええ!」
うふふっ、と。逃げようとするコルテスの頬に、大きくばってんを書いたイドルフリードが、満足そうに微笑む。
「うわぁあ落ちるのかこれ…」
「さ、2回戦、始めるぞ!」
「まだやるのか!?」
「当然。君の顔を真っ黒にしてやるからな!」
「てめぇ…」
いい度胸だ受けてたつ、と。コルテスも羽子板を握り直した。
*
その後、何故だか顔が黒くなるのがイドルフリードばかりだったり、風呂にはいっても墨が落ちず、悲鳴が聞こえたりするのはまた別のお話。
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