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 「ちょこっとおでかけ」



*
「「やっ・・・・・っと出られた!!!」」

二人そろって出てきたのは。来たこともない街の、とても大きな駅の、割と大きな出入口。
仲良くキャリーバッグを引きずり、ケータイ片手にした二人は。

「君此処に来る前に俺は迷ったりしないから平気だとか言ってなかったか!?」
「うるっせぇお前こそ迷ったときは私がいるから云々豪語してたよな!?」
「普段はここまで迷ったりしない!君がむちゃくちゃに動き回るから悪いんだろう!?」
「おまえ人のせいにするな!!」

どうやら迷ったご様子。
コルテスとイドルフリートは、大学の休みを利用して小旅行を計画したのだった。とはいっても、ほんとうにささやかなものだけれど。そのコースの一つとして、この街での買い物、があったのだ、が。

「あーあ、どうすんだよこれ。こんなに迷うと思ってなかったから、時間もうほとんどねぇぞ」
「えっじゃあ食べたいって言ってたスイーツも見たいって言ってた服もアウトか?」
「そうだなぁ・・・」
「・・・コルテスの低能」
「俺のせい!?」

ぷくっと。頬を膨らませてぷいっと明後日の方を向かれてしまった。どうしよう。
此処のことは、偶然見ていたTVで知って。そうとうイドルフリートのお気に召したらしく、この旅行のコースの中で一番楽しみにしていたといっても過言ではない。

「わ、悪い・・・」
「ふん」
「ちょ、ほんと申し訳なかったって。ほんと」
「・・・」
「えー・・・どうするか・・・じゃあ、イドがどうしても食べたいって言ってたパフェだけ食ってくか?ぎりぎりだけど、たぶんその位の時間は・・・」
「いい」
「え?」
「いい。別にその辺ぶらぶらして回れれば、それでいい」
「え・・だって、いいのか?おまえあんなに楽しみに
「いいって言っているだろう」

相変わらず向こうを向かれたままで表情がうかがえない。で、困っていると。

「・・・イド?」
「別に・・・また、くれば、いい」

ていのうが。そう小さくつぶやいたのが聴こえた。聴き間違いかと思ったけれど、ふるふると小さく震えながら服の端を掴んでくるイドルフリートの指から考えて、おそらく正解だろう。

「・・・次来るときは、イドのまわりたい場所、制覇しような」
「・・・当たり前だろう」

ほんの少し、握る力が強くなった指を見て。

迷ったのも、悪くはなかったかな、と。イドルフリートには悪いけれど、そんなことを思った。

*

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