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 ◆コルイド



スペクタクルPさまの『The Beast.』を聴いて爆発した結果の産物でござい。パロっていうか設定を使わせていただいたというか勝手にすみません楽しかったです。


『The Author.』

*

強がりは、自分を守る殻でした。
不干渉は、自分の小さなプライドでした。


「まったく、君には驚かされたよ」


物語に絡め捕られるくらいなら。
物語を外から創り上げよう。

そういって彼は、自ら物語を棄て。それを紡ぐ存在となりました。

彼は自分だけの物語を創り上げました。誰にも書き込めない、誰にも変えられない、強固で空虚な自分だけの物語。

「なのに君は、全部易々と潜り抜けてきた」

「ページを越えてインクを塗り替えて」

「私には無いものばかり持っていた君が手を差し伸べてきたときは、思わず剣に手がのびたよ」


初めて向けられた『愛』というものに、とってもとっても戸惑いました。

恐かったのです。苦しかったのです。自分がそんな、温かいものに触れることが。長く孤独に慣れ親しんだこの身体が。そんなものに触れて新しいインクに染まることが。赦せませんでした。


「勘違いを、していたんだな」

「美しい面持ちと、永遠の命を手に入れて」

「長いこと、書き物ばかりしていて」

「きっと、自分一人で何でもできる気に、なっていたんだ」


…強がりは、半世紀に渡り。
戯れに自分を登場人物にした世界で。
それはあまりにも、幸福な時間でした。


「隠し事を、していたよ」

「君がくれたコレが愛だと、知っていたよ」

「心洗われるような青く広い海の雄大さも」
「数えど数えどきりのない星々の美しさも」
「晴れ渡る空の突き抜けるような爽快さも」
「みんなと笑いながら浴びた陽の暖かさも」

「…みんな、君のくれた、愛だったと」

「ごめんよ。全部、知っていた」

怖かったのです。辛かったのです。
こんな自分が、『永遠の愛』を、望んだことが。
望んでしまえば、叶わないような気がして。


静かにしずかに薄れて消えた、ページのインク。

けれどそのインクは、これからまた彼が孤独に物語を紡ぎ続けることを、良しとしませんでした。
自らはめた枷達は、インクのおかげで重くなり。

もう、物語なんて、書けそうに、ありませんでした。


「こうなったのは、君のせいだからな」

「仕方がないからわたしももう一度、物語の中に還るとするよ」

「君にまた会える日まで。何年でも何十年でも何百年何千年」

「…ずっとずっと、待っているからな」


今までずっと、自分のためだけに物語を紡ぎ続けた策者は。

最後の最後に、初めて登場人物のためにペンを走らせ。

自分もまた、元の場所へと還りました。


書き終わった文字たちは。ぶわりと滲んで名前同士が繋がっていて。
まるで手でも、繋いでいるかのようでした。

*

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