コルイド
わかったことは、わたしはどうやら風邪ネタが大好物らしいってことですね!前にも書いた気がするけどあれたしかDVコルイドだった気がするから、今度は幸せ系で。
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けほ、けほ。手をあてた口の隙間から漏れてくる呼吸は、ぜいぜいと苦しそうなもので。
様子を見に来たコルテスが、苦笑しながらベッドに腰かける。
「あーあ、本格的にひいちまったな」
「…私としたことが」
「ほら、とりあえず横になっとけって。顔真っ赤だぞ」
「うるさ、っ平気だ…けほ」
「はいはい、病人が強がらない」
放っておいたら仕事をしだしそうなイドルフリートを、子供にするように寝かしつける。不服そうにこちらを睨んでくるのが雰囲気だけで分かるけれど、こっちだってうつされたらたまらない。
濡らした布を額にかけつつ、ぽんぽんと撫でてやる。
「まぁ、今は他のやつが代わりに仕事してくれてるから。とりあえずお前はゆっくり休めよ」
「…」
「んなぶすっとすんなって。風邪なんざ、引くときは誰だってひいちまうもんだし。気にすんなって」
「…嫌だ」
「は?」
「やっぱりわたしもいく」
「え、ちょちょちょ、イド!?」
もそりと起き上がったイドルフリートに、コルテスが目を見開く。ふらふらなくせにベッドから降りようとするのを必死に食い止め、いいから大人しくしてろとなだめすかしつつ。
「いいから寝てろあほ!」
「このふねのこうかいしはわたしだ!」
「沈没しそうだな!!」
「いいからどけ…ッげほ、けほ」
「誰が退くか!」
低能はそっちだろ、そういいつつ背中をさすってやると、冷静になったらしいイドルフリートが、しゅんと肩を落とす。
「まぁ、丈夫なお前のことだ。すぐに動けるようになるさ」
そういって、仕事に戻ろうと腰をあげかけたとき。
くん。
幽かに。ほんの幽かに、シャツの裾を引っ張られ。驚いた反動で、再度ベッドに腰が落ちる。
ぱちくりと引っ張ったものの方を見ると。
「……。イド?」
「…」
引っ張ったのは、俯いたままふるふるとうでだけ伸ばす、イドルフリートで。ちょっと状況が把握できないぞーと、コルテスが混乱していると。
「…」
ぱっとつまんでいた指を離し、そのまま毛布のなかに隠れてしまった。まさか。
「…なにお前。もしかして、さみしい…とか?」
正解、と言わんばかりに膝がとんできた。丸まった状態で蹴りをとばすとはなんと器用な。
相変わらず顔をだそうとしない毛布の山に向かって、わざとらしいため息をつく。
「皆に指示だけだしてくるから、待ってろ」
くすりと笑いながら今度こそ立ち上がり、部屋を出る。持ってきてこなす仕事って何があったかな、そう考えるコルテスの背後で、もそもそと毛布の山が崩れた気配がした。
『風邪にご注意』
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