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 「恋ゲーム」



*

「好きだ!」
「俺の方が好きだ!」
「何を言う、私の方が好きに決まってる!!」
「はっ、俺の好き度に敵うと思ってんのか?」
「愚問だな。私の好きさを理解して、まだその言葉が吐けるかな?」
「…なにしてんですか二人とも」

なんだなんだと集まってきた船員たちのど真ん中にあったのは。お互いのことを好きだと言い合う将軍と航海士で。頭でも沸いたかと皆が首をかしげる。

「あなた方何時から公式バカップルになったんですか」

船員の一人が呆れたようにいうと、コルテスが楽しそうに説明してくれた。

「違うちがう、ゲームだよ」
「ゲーム?」
「互いのことを好きだって言い張って、より相手を好きだって表現できた方の勝ち」
「…それ、楽しいんですか?」
「罰ゲームがあるからな」

イドルフリートも説明にのってきた。 罰ゲームの内容を嬉しそうに説明する。それを聞いた船員たちの反応は。

「いいっすねそれ!皆、どっちが勝つか賭けようぜ!」
「いや、どっちが勝手も変わんなくね?負けた方が全員に酒奢るってんじゃ」
「いや、イドが酒を奢るつもりなだけで、俺は他の条件でもいいぜ。なにかひとつ芸をするとか」
「仕事替わるとかでも?」
「みんな聞けえええええ将軍が勝ったら1日仕事交代してくれるらしいぞおおおおお」
「おいこら!!?」
「はっは、間抜けだなエルナン!まぁ、せいぜい頑張りたまえよ!私は負ける気などないから!」
「てめっ」
「おぉっと!イドさん名前呼びとは!ポイント高い!」
「なに審判気どってんだよ!」
「ふふん、だからいったろう、負ける気はしない、と」
「てめぇ…ん?これ、なにしてもいいんだよな?」
「?ああ。そうだ、が」

ざわり。拍手や歓声が沸き立つ。

「ん、ふ…っんぅうッ!」
「ん、ごちそうさま、イド?」

ぺろりと名残惜しそうに唇をなめ、仕上げに耳許に愛してるの言葉を残して離れる。真っ赤になって口をはくはくさせるイドルフリートをみて、勝ち誇ったようにコルテスが宣言する。

「俺の勝ちだな!」
「なっ…ー!」
「そっすねー…これ以上の愛情表現は…」
「お、おいちょっと…!」
「みんな喜べ!ただ酒飲める!!」
「ちょ、貴様ら…!!」
「諦めろよーイド」

ふふんと胸を張るコルテスを、悔しそうに睨み付ける。勝手に騒ぎ出してしまった船員たちに静かにするよう一喝し、仕事が残っているからとコルテスは部屋に引き上げることにした。

「そういやイド、お前まだ明日の航路の相談に来てないぞ」
「あ。しまった」
「今行ったらどうですか?どうぞそのまま仲良くしていてくださいよ!」
「貴様ら…」
「つーか俺らもやろうぜ!!」


騒ぐ船員たちを残し、二人で部屋に向かう。幽かな喧騒が聞こえるだけの静かな廊下に、コルテスの声が響く。よかったのか?。

「何がだい?」
「アレのルール。皆に言ってないのが1つあるだろ」
「ああ…いいんじゃないか?下手に言って、誤解されても困るだろう」
「だな」

そういって。

二人同時に、乱暴に唇を拭った。
嫌そうに、忌々しそうに。まるで、毒でも含んだかのように。


そのまま、それぞれ己の部屋に、戻っていった。

*

ルール:好きな相手とは、やってはいけない

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