テキスト | ナノ
 


 4



*

イドの部屋に戻ると、イドはすでに戻ってきていて。コルテスは、今までで一番驚いた。

「い・・・っイド!?おま、どうしたんだよそれ!?ああやっぱり喋るな、とりあえずでもどうした何があった!?」
「・・・おち、つきたまえよ、て、の・・・っけほ、ただの、実験だよ。いつもの事だろう」
「いつものってレベルじゃねえだろ!!?どうやったらそんな血まみれになるほど血吐けるんだよ!」

初めて会った時も相当な顔色をしていたし、その後の投薬でも何度もイドの具合悪そうな顔は見ている。慣れているつもりだった。
でも、今度のはレベルが違う。具合が悪そうなんじゃない、死にかけの、あの、土気色の顔をしているのだ。

「一体、どんな実験をしたらそんなことになるんだよ!?」
「内臓、を、違うもので、代用するなんてことを、かんがえ、ついた・・みたいでな」

最近中身の具合がよかった私が、被験体に選ばれたんだ。辛そうに、だけどなんでもなさそうにさらりと、イドは言ってのけた。
もしかしたら、イドにとってはこんなこと、日常茶飯事なのかもしれない。自分が来る前にも、何度も、こんなことがあったのかもしれない。

けれど、自分にはもう限界だった。

「・・・コルテス?」
「分かった。もう待たない。もう少しだけ様子を見ようと思ったが・・・もう、待てない」
「なにを」
「もう情報も十分集めた。ここをつぶす算段もついてる。もう、我慢も限界だ」
「・・・!コルテス、君、まさか」

イドが口の形だけで問うてくる。君、まさかスパイか。
ばれたという事実より、イドがそれに気づいたことに驚く。

「な・・なんで分か、」
「・・・いたんだよ、昔にも。そんな奴が、2、3人ほどな」

イドによると、自分の前にも3人ほど、此処に忍び込んで情報を盗み出そうとした輩がいたらしい。予想はつくが、それでも気になって、そいつらの末路を聞く。
案の定。

「殺されたよ。ここの研究員総出で。彼ららしく、自分たちの作った薬や道具を使って悲惨な目に合わせていたのを覚えている」
「・・・」

無表情に言ってのけたイドが、悲痛な面持ちでコルテスの方を向く。そんな表情ができたのか、場違いなことを考えながらイドの顔を見たコルテスに、イドが懇願するように言う。

「やめてくれ、コルテス。彼らに、逆らわないでくれ」
「え・・・」
「此処で、こんなにもまともに私と話をしてくれるのは、君だけなんだ。頼む、殺されないでほしい」
「い、イド?」

今までにないような悲痛な面持ちと声に、コルテスが戸惑った、その時。

「コルテス君、ちょっと出てきてくれ」

「「!!」」

今までタイミング悪かったとか言ってすみませんでした、そういいたくなるようなタイミングで、扉の外から研究員の声がかかる。

「こ、コルテス。いまの会話」
「・・・・」
「おい、いるんだろうコルテス君」
「・・・ああ、今行く」
「コルテス!!」

縋り付いてきたイドに、大丈夫だ、必ず助ける、と自信たっぷりに言って、呆然としている間に部屋を出る。

出たところにいたのは、数名の研究員と、所長。

「・・・これはこれは、所長自ら何の用です」
「おや。性格が変わったようだね。あんなに弱々しかったのに・・・それとも」
「・・・っ」
「戻った、と、言った方がいいかな、スパイ君?」

上手くだましてくれたな、そういい終わらないうちに、コルテスが隠し持っていたペン類を一斉に投げつける。
隠していたけれど、コルテスは自分が所属していた組織の中でも、相当な手練れだから。武術だって、護身術だって、殺人術だって。なんだって、身に着けている。
ペンのように鋭く尖ったものならば、彼にとってはもってこいの凶器になる。それを使って彼らをねじ伏せた時。

「コルテス!!」

部屋から飛び出してきたイドが、コルテスの後ろを狙っていた研究員を突き飛ばす。驚いているコルテスの腕をとり、イドが走り出す。

「い、イド!?おまえ何して・・っ」
「君が言ったんだろう大丈夫だって!助けるって!自分の言葉には責任を持ちたまえよ!!」

時間がたって少しは回復したものの、実験の影響で未だ顔色の悪いイドの腕を逆に自分がつかみ、コルテスが先に立って走る。

「何処に向かっているんだ!」
「発電エリアだ!」
「発電!?」
「ここ、こんな山奥だと電気も何もこねぇから、発電は自分のとこでしてんだろ!?調べた時見つけたんだ!あそこを爆破する!!」
「ば・・・どうやって!?」
「見てればわかる!!」

途中とちゅうで襲いかかってくる敵を蹴散らしながら、二人が発電エリアにたどり着く。

突然の激しい運動に座り込んでしまったイドを危なくない場所におき、コルテスが見るからに手作りとわかる爆弾を一つ取り出す。

「き、きみ・・そんなもの、どこで」
「んなもん、ちょろっと道具が揃えば作るのは簡単だよ。耳と目ふさいでろ。俺が抱き上げたら、抵抗するなよ」
「は!?」
「いくぞ!!」

返事を待たずに、コルテスが爆弾をエリアの奥に投げ込む。投げた直後に向きを変え、コルテスがイドを抱き上げてその場を離れる。

直後。

塞いだはずの耳を突き抜け、脳に直接刺さる爆音。動こうにも動けないイドを抱いて、コルテスが爆風にのってその場を離れた。

*

prev next





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -