でも、まあ……、と朝霧は続けた。

「お前は、よく呼ばれるだろうね。きちんと教育をしないとだからさ。恨むなら自分のその顔を恨みな。上玉は他のヤツより厳しくされるよ」

 両手で顔を包まれるようにそう言われる。嘉月は真っ直ぐ朝霧の目を見つめた。そもそもここがどのような場所か、説明をいっさいされていないのだ。

「ここは……、ここはいったいどういう場所なんですか……?」

 朝霧さん兄さん、と嘉月は言う。そろそろ言わないとね、そうぼそりと呟き朝霧は嘉月の顔から両手を離した。

「ここは男娼館……、陰間茶屋って言ってね、男が色を売る場所さ」

 機織りの仕事や母の看病ばかりをしていた嘉月はそういった話を耳に入れる機会がなかった。しかも彼はまだ十二歳だ。男娼や陰間、色など言われてもピンと来ず、首を傾げるしかなかった。

「もう少し簡単に説明すると、俺たちは体を売って金を貰うんだ。……、ここに男を受け入れるのさ」

 スルスルと朝霧の手が体を撫でる。簡単にしてくれた朝霧の話を聞いて、ようやく意味を理解した嘉月は、驚きと恐怖で目を見開く。

「でもね、嘉月。ここは東頭で一番の高級陰間茶屋だから、まだ運がいい方さ。たまに変なヤツは来るけど、それなりの身分を持った人達しか来ないからね」



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