其ノ五
 

「あのさ。自己紹介しようよ。一緒に旅をするのに名前が解らないって不便だし、普通嫌でしょ? 僕は雨露。君は?」

 誰だって名前の解らない者と一緒に旅などしたく無いだろう。何時までも笑ったまま会話が進まないのでは埒が明かない為、雨露は名乗るという手段を使った。

「妖刀使いの翡翠だ。よろしくな」

 妖刀使い。その言葉に今度は雨露が驚く番だった。まさか妖刀使いだったとは。
 最初に会ったとき、自分と同じように霊力等を使って物の怪や妖怪を倒しているものだと、雨露は勝手に思い込んでいたのだ。
 そう思い込んでも当然であろう。
 この翡翠からは妖刀使い独特の邪気なんてものを一切感じなかったのだから。
 翡翠の妖刀は、邪気を発しもしていない。それに、翡翠自体無理に隠そうともしていない。
 それなのに邪気が全く持って感じられないのだ。
 雨露達は国を背負わされる。ただの妖刀使いが任せられるわけが無いくらいは解った。彼がただの妖刀使いだったら、霊力を使う者だって同じだ。雨露ではなくそこら辺の巫女に任せれば良いこと。



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