其ノ四
 

 流石に気づいたらしい。まあ触れているのだから、気づいてくれないと逆に困る。

「ん……?」

 眼帯少年は顔を上げながら短く声を発した。

「お前も貰ったでしょ? この文」

 文を懐から出し眼帯少年に見せれば、あれ? と声を漏らす。
 まあ大体の予想はついている、と彼はふう……、と溜め息を吐いた。

「どうしたのさ」

 雨露は呆れながらも問い掛けの言葉を口から発した。

「女…………? 男と聞いていたはずなのだが……」

 次は気づかれぬよう、やんわりとため息を吐く。
 何度言われたか解らない台詞に、彼はもう慣れてきたところだ。まあ、女のような格好をしている自分が悪いが、この格好にはかなり理由が有るわけで、どうしても変えられないのだ。
 心の中でひっそりそう思った。

「僕は男だよ」

 しばらく眼帯少年を無言で見てからそうはっきりと言い放つ。

「は……!?」
「こっちにだって事情があるの。したくて女の形(ナリ)をしてるわけじゃないから。そもそも、事情がなくてこんな格好してる奴がいたらただの変態だよ?」

 事情がある。したくてしている訳ではない。どの言葉に納得したかは知らないが、眼帯少年はこれ以上格好について触れては来なかった。

「確かにそうだな」

 雨露の最後の発言が面白かったのか、眼帯少年はクスクスと笑う。

「物わかりが良くて良かった」

 そんな彼を見ながら雨露はそうぼそりと呟いた。
 これから一緒に旅をするのだ。面倒な奴で無いことに越したことはない。
 彼はそう考えていた。



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