其ノ十五
「嫌です!! 雨露様がそんなに苦しそうな顔をしているのに、ただ立って見ているのは嫌なんです!!」
腕に掛けていた力をさらに掛け、蓮は雨露をギュッと抱き締める。
「わかった。じゃあ、蜘蛛とギリギリまで近づいても……危ないから離れないでね」
はっ……、と苦しそうに息をしながら雨露は言った。
二人が話をしている間にもズルリ、ズルリと引っ張られていく。
どんどん間合いが詰まり、その距離あと腕一本というところまで近付く。
後少し、後少し。雨露は冷静に思っていた。
「ギャッ!!」
女が短く悲鳴を発したと同時に内側から肉が弾け飛ぶ。
糸を操る本体が居なくなり、力をなくした糸は下にはらりと落ちた。
雨露はふらりと地面に座り込む。
「大丈夫ですか?」
心配そうに問う連に、雨露は「なんとか……」と答え、ふう……と息を吐いた。
ようやく糸から解放された、と言わんばかりの顔で翡翠も二人に近寄る。雨露が大丈夫だということはわかっているようで、その事について彼は触れなかった。
「あの妖怪は一体何なんだ?」
「あ、あの……、何もしてないのに、破裂……、しましたよね?」
二人は雨露に、わからないという顔をしながら聞く。
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