其ノ十四
だが、妖怪は一瞬の隙をつき彼女の体目掛けて糸を吐き出す。
「っ!! 危ない !!」
すばやい動きで雨露は駆け、右手を蓮の前に突き出した。
右手に白い糸が絡む。がっしりと腕に糸が巻かれた瞬間、少しずつ純白が赤く染まっていった。
それと比例するように雨露の表情は苦しそうになっていく。拘束のされていない左手を使い糸に霊力をぶつけても、それを美味しそうに次から次へと糸は吸い取っていく。
彼は一旦糸を破壊する事をやめ、右腕に左手を添える。
「力が漲ってくる!! 美味い! 美味いぞ!! 血も霊力も精も、一滴残らず吸い上げてやろう!! そっちの女も男も、仲間が食われる様を眺めていればよい!! まあその後お前達もあたしに食われる運命だがな!」
そう言うと、女はベキベキと音を立てながら翡翠に切り落とされた右腕を再生させた。
そして自分の玩具のように雨露を自分の元へと引き寄せていく。ズルリ、ズルリと履き物と地面が擦れた。
「あ、雨露様!!」
蓮は雨露の背後から腕を回し、妖怪とは別の方向へと引っ張る。しかし彼女の力だけでは足りず、一緒に引っ張られた。
「蓮さん! 危ないから離して!」
辛そうな顔をしながら雨露は言う。蓮は一瞬戸惑いキュッと唇を噛むが、すぐにその口を開く。
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