其ノ十三
そんな事はお構いなしに妖怪はこちらへと突っ込んできた。
それをひらりと交わし、翡翠は女の右腕をざしゅりと切り落とす。
ギャアアアとつんざくような悲鳴を発し、蜘蛛は少しばかり後退する。女の顔が下を向き、次の瞬間くつくつと不適な笑い声が聞こえた。それと同時に冷たい不穏な風が吹く。
「ああ! 霊力を持つ者が二人も居る! 美味そうだ! 今すぐ食ろうてあたしの血肉にしてやろうぞ!!」
「でも、それは僕を倒せたら、の話しでしょう?」
余裕綽々な妖怪に、雨露は挑発するような口調で言う。
それに乗った蜘蛛は、先ずは邪魔な翡翠を片付けようと彼に向かって真っ白な糸を放出した。
それを翡翠は斬ろうとするのだが、糸は斬れるのではなく刀にドロドロとくっつくだけだ。翡翠は足首と左手を拘束され、動けなくなってしまった。
彼が捕まった事に気がついた蓮は、糸を解こうと立ち上がり駆け寄る。
「触っちゃ駄目だ!!」
ニヤリと笑みを浮かべる女に気付いた雨露は、ハッとし今にも糸に触れそうな彼女に大声を投げかけた。
「それはきっと霊力を吸い取る糸だよ!! だから触っちゃ駄目! 手を引っ込めて!!」
大声にビクリとしながらも言われた通りに手を自分の方へと引っ込める。
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