其ノ十
 

 雨露と蓮は顔を一度見合わせ、やれやれといったような表情をする。
 それから二人は翡翠の元へと近付き、雨露が、あの……と遠慮がちに話の腰を折った。
 突然話を止められたおばあさんは雨露の方をさっと見る。だが、嫌そうな顔は一切しない。逆にほころんでいる。

「おやまあ、巫女さんかい」

 巫女という言葉を訂正しようとした時、またもやおばあさんの話が始まってしまった。
 僕達はこれで……、と言っても「そうかねえ。ああ! それでね」と話が進んでいく。
 どうしようもない。そう思った三人は、右から左へどうしても流れていくおばあさんの話に、適当に相槌を打った。

「すっかり黄昏時になってしまいましたね……」

 彼女が言うように空は綺麗な茜色に変わっている。

「…………、まだ少し明るいですし、神社、行きませんか?」

 神社へ行く事を知らされていない翡翠はもちろんきょとんとした顔だ。

「雨露様、とても楽しみなお顔だったので……。それに、最近私も参拝できていないんです。大丈夫! お二人が居れば安心ですから!」

 活き活きとした蓮の雰囲気に負けてしまいまだ状況を把握しきれていない翡翠を引き連れて、彼女の後に続き神社へと向かう。
 その途中で、翡翠にはきちんと店で話していた内容を教えた。



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