其ノ九
 

「あ、次はどこを案内してくれる?」

 そうですね、と下を向いた彼女は、少し考えてから、顔をこちらに向ける。

「では次は神社へ行きましょう! 鳥羽の人以外の方が見られたら、ただのおんぼろ神社ですが……」
「神社は好きなんだ。魅力があるっていうか、何だろう……、引き付けられちゃうんだよね」

 そう言うと蓮は輝く瞳で雨露を見、神社って不思議ですよね、と可愛い笑顔で言う。
 じゃあ行こうかと立ち上がる雨露に、蓮は声を掛けた。

「あ、あの。翡翠様は……、あっ!」

 辺りをきょろきょろ見渡すと、店の外に設置された赤い長椅子に腰掛ける翡翠の姿が確認できる。
 代金を払ってから彼の元へ二人で駆け寄れば、客であろう年配の方と喋っていた。
 おばあさんは楽しげに話していたが、翡翠はといえば笑みがひきつっている。
 雨露と蓮が会話を弾ませていたのは半刻。そのお喋りが始まる前に、日向ぼっこをして来ると自分の食べた分お金を払い、翡翠が店を出たのはその少し前の事。
 いつから二人が喋っているのかはわからないが、翡翠の顔からしてかなり話し込んでいたようだ。
 おばあさんの一方的な話についていけていない翡翠は、二人の存在に気付き、助けてと視線だけを寄越す。



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