其ノ三
しばらく歩き、茶屋へと着く。
茶屋は賑わっており、旅人やら村人やらでごった返していた。
待ち合わせていた人物は、初対面でありながらこの人混みの中できっとすぐに見つけられるだろう。
文に記されていた人物の特徴が独特、いや、個性的すぎるのだ。背の高い少年で髪は長く上の方で纏めており、緑色。おまけに眼帯もしているとの事だ。
当たりを見回せば、この人混みの中頭が緑色の長髪で眼帯をしている少年だなんて一人しか居ないのだからかなり目立つ。周りの人もチラチラと見ていた。
まあこの国に緑の髪だなんていう人物は今までに見てきたことはないし、珍しいものだ。
その人物、仮に眼帯少年としよう。眼帯少年は行き交う人々の不思議そうな目など気にもとめず、呑気に座って団子を放馬っていた。
これからこんな呑気なやつと旅をするのかと、彼は少々不安になりながらも静かに眼帯少年の前に立った。
まあ立つまでは良かったのだ。
どれだけ鈍感なのだろうか。はたまた試しているのだろうか。
目の前に立った雨露などには目もくれず、未だに団子を放馬っている。
その様子に彼は段々と苛立ちを隠せないでいた。
「おい」
一つ声を掛けても気づかない。
「……。おい!」
雨露はぱしりと眼帯少年の腕を掴み、声を少し荒らげもう一度呼び掛けた。
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