其ノ八
 

 忘れてきてしまった籠を取りに行くため妖怪と遭遇した所へと一度戻り、その後に鳥羽にある小さな村へと蓮に案内してもらう。
 鳥羽は海と森に囲まれているため、土地になれない者だけで動くとすぐに迷子になってしまうらしい。そのため、鳥羽に滞在している間は蓮が一緒に行動してくれることになった。

「ここのおむすびはとっても美味しいんですよ! 中にはた〜っぷり焼き鮭が入っているんです」

 今は蓮がすすめてくれた店でこれまた蓮がすすめてくれたおむすびを食べている。彼女が先ほど述べたように、鮭がたくさん使われていて美味しい。ほくほく湯気が立ち上る白いつやつやのお米と、ぱりっとした黒い海苔の相性は最高だ。
 そして食後は餡蜜を頂く。ちなみにこれも彼女が笑顔ですすめてくれた物。
 甘い物が大好きな雨露は幸せそうな顔でそれを平らげる。
 餡蜜のような甘ったるい食べ物が苦手な翡翠も、しつこくのない甘さと余りの美味しさにぺろりと完食した。

「蓮さん、ここのお店本当にいいところだね」

 彼が蓮にそう言えば、彼女は嬉しそうに顔を少し紅く染める。

「よかったです。お二人には鳥羽の良いところをたくさん知ってもらいたいので」

 そう言って蓮は微笑む。



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