其ノ五
二人がそうお礼を言えば、亀は嬉しそうに、それは良かったと口にした。
白虎に戻ると言う亀を見送り、雨露と翡翠は宿を探しに歩き出す。
だが歩いても歩いても木、後ろを振り返れば海。そして前を向けば木で左右にも木。
広大な森を歩いていたら少し大きめの川と出会った。そこで乾いた喉を潤し、体を清める。
あまりの寒さに震えたが、雨露は自分の血を。翡翠は返り血をどうしても洗い流したかった。
焚き火をして冷えた体をあたためる為、すぐ側に寄る。
こうして焚き火にあたっていると、だんだんと眠くなってきた。
もう諦めてここで寝よう、そう思ったのは夢の中が現実か。それは定かではなかった。
サラリと風が頬を撫でる冷たい感覚に、雨露は目を覚ます。
起きたばかりでまだ覚醒しきっていない頭でここはどこだろうと考えた。だんだんとゆっくり脳の働きがよくなり思い出して来る。
そういえば森の中で迷ったんだな、そこまで考えたところで雨露は勢い良く立ち上がった。
「夜になる前に人里を探して宿を探さないと!」
夜の森には妖怪がうじゃうじゃだ。それにお腹も空いてきた。茶屋でみたらし団子を食べただけだと思い出し、さらにお腹が減る。
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