其ノ二
 

 彼はふと手紙の事を思い出した。
 あれは何週間か前の雨降る日だったはずだ。
 伝書鳩に。いや、正確には式紙だが。その足にくくりつけられた一通の文。
 最初は差出人の名前が無かった為怪しくは思ったが、意を決し文に目を通した。
 そこには最近の怪奇現象についてのこと、それからその怪奇現象が起きているのは妖怪が原因かも知れないということ、国の為力を貸してほしいということが事細かく書かれていた。
 そう、今此の近辺の国々は怪奇現象に見回れている。夏なのに冬のような寒さ。勿論雪も降り、植物も育たない。今は何とか食料はあるものの、物価は高く、米だなんて普通の者は手に入れることも許されない。
 こんな状況では直ぐに食料は底をつき、人々が反乱を起こすであろう。
 自分たちが食べていくだけで精一杯という事もあってか、前々までよくあった国同士の争いが起こらないことが幸いだ。
 突如彼は一つの考えが頭に浮かび、深い溜め息を吐いた。
 これでは自分が国を背負う事になるではないかと。
 面倒事から逃れてきた性分、こういう事には足を突っ込みたくはない。
 だが、文の内容は有無も言わせないものだった。
 日程を決められている上に、一緒に旅を共にする者の特徴までもが記されている。
 雨露はまたも深い溜め息を吐き、旅支度を始めた。
 そして、今に至る。
 回想から戻ってきた彼も、その回想の中の自分と同じように深い溜め息を吐いた。



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