其ノ四十
 

 空からはどうだろうか。そう翡翠は提案したが、白虎と理の国境(クニザカイ)には高い山が連なっており、越えるためには天候の悪い雲の上を通らなければならないらしく、空からでも無理との事であった。

「それなら鳥羽島はどうだ? 吾の古くからの友人が居てな、そやつが連れて行ってくれるであろう。空の旅も良いとは思うが、海の旅もなかなかのものだぞ。まあ良い。吾が話しをつけてきてやろう。白虎の浜辺で待っているからな!」

 銀露はそう言い、翡翠達の返事を聞かずに元の銀狐の姿になって、洞穴を出て行ってしまう。
 勝手に進んでしまった話しに翡翠と雨露は顔を見合わせ、同時に深い深い溜め息を吐くのであった。
 そんな二人に白虎の人々は苦笑いをしながら、それじゃあ私達はこれで。と洞穴を去っていく。
 結果、最後に残されたのは三人と一匹の虎。
 気まずい空気が漂う。
 その空気を断ち切ってくれたのは他でもない、虎白であった。

「ほれ! 何をしておる! 早う行け! きっと銀露がながーい首して待って居るぞ!」

 その言葉を聞き、翡翠と雨露は、少しばかり慌て、洞穴を後にする。

「ふふっ。不思議な奴等だ。しかし、妾がどうしても行かなくてはならぬ場所に行く時期に国を狙ってくるとは……。人狩リにはもっと警戒しなくてはならぬな……」

 そう呟き、虎白とそのお供の白虎は真っ白な光に姿を変え消えていった。



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