其ノ三十九
「その緑いのが銀露がよく話す翡翠なのか?」
少女の声が隣から聞こえ、三人はそちらへと振り向く。
一斉に振り向いた為か、その少女は、驚いたと言わんばかりに肩をびくりと震わせる。
「銀露。誰だ、これ」
「これ!! 妾をこれ扱いするでない! 妾はこの白虎の土地神であるぞ! 名を虎白(コハク)という。まったく最近の者はこんな事も知らぬのか……」
そう言った後ふてくされたのか、ぶつぶつと文句を呟いていた。
こうしていればただの可愛い幼子なのだがなあ、そう銀露は笑いながらぼそりと言う。その言葉にさらにムスッとしながら虎白は銀露を睨み付け、翡翠と雨露の方へと向き直った。
「銀露が先に言ってしまったが……。妾が留守の間、よくぞこの白虎を守ってくれたな。心より感謝するぞ。お前達が最初に来てくれたのが白虎で助かった。次は何処へと参るのじゃ?」
何処へ参るのじゃ。
それを聞いて翡翠と雨露は顔を見合わせた。
「理(コトワリ)……とかかな?」
それにくちなわに怯えていた老人が口を挟んだ。
「お話し中すまないが、理国は今、この白虎からは行けんよ。二月前に土砂崩れがあったんじゃ……。くちなわに捕らえられていたから、道はまだ塞がったまま何じゃよ。あの状況じゃあ何時通れるようになるかは解らん」
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