其ノ三十
 

「あれは数日前の、月の無い朔の日の事でした。突如として国が大きな白蛇で埋め尽くされ、何時の間に掘ったのか、この地の……主様の社の丁度真下に出来たこの空間に私達は閉じ込められてしまいました。一日も経たぬ間に白虎の者はここへ連れてこられたのです。その男は、自らを“くちなわ”と名乗りました。くちなわは身に宿した蛇に何百と人を食らわせ、着々と力を蓄えています。ですが、くちなわの本来の目的は守護神である白虎(ビャッコ)を食らうことです。“白虎は守護神であり主様である。この地揺らがす者来たれば姿を表し追い払うであろう。だが、主様食らう者現れれば忽ちこの世を滅ぼすであろう。”この地に古くからある言い伝えです。幼い頃、婆様に習いました。どうか。どうかくちなわを止めてください! このままではこの国だけで無く、全ての地がくちなわによって。いいえ、主様の力によって滅ぼされてしまいます!!」

…瑞江の話を聞いて雨露は思った。まだ手掛かりが少なすぎて全て解りはしないが、もしかしたら人狩リは力を手にするために土地神を探しているのではないのか。
 くちなわを阻止する。
 雨露は翡翠と目を合わせ、自分達が歩いてきた道をさっと見た。



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