其ノ二十七
 

 一段、二段、と慎重に進んでいく。
 先ほど翡翠が消えた場所には穴があり、術で塞がれていた。翡翠は偶然知らずしてそれを解いてしまったようだ。
 大人が軽々二人入れる大きさの穴が空いており、縄と丈夫そうな木で作られた梯子が掛けられている。
 雨露は今、その梯子を使い、穴へと下りているところであった。
 梯子を下りた所は急な坂になっていたようで、足を付き手を離した瞬間重力に従い滑り落ちていく。

「なっ!! っ……! いっ、た……」

 思ったよりも距離は短く、受け身を取る前に地面へと叩きつけられた。
 痛みを堪えながら目を開ければ広い空間。辺りは壁に括り付けられた大松のお陰で明るかった。

「雨露、大丈夫か?」

 大丈夫。雨露はそう言いながら立ち上がり、服に付いた土を払い落とす。

「人工的に作られた空間、ね……」

 穴から落ちてきた雨露の目の前には、冷たさを感じさせる石造りの扉が存在する。
 二人はそれに近付き手を掛けた。
 ぎぎぎっ、と嫌な音を立てながら開く扉。
 そしてまた、長く続く道が顔を見せた。
 その先にはもう一つ部屋があるのだろう。ぼんやりとした今居る場所の炎の光が、手前の道だけを微かに道を照らしている。



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