其ノ二十五
 

「翡翠。あれが泡沫の本当の姿だよ。泡沫は冥界に居る神様なんだ」

 冥界に居る神、ということは、きっと凄いことなのだろう。
 翡翠は泡沫をしばらくの間、まじまじと見ていた。

「泡沫。中には子供が居る可能性がある。だから横から慎重に壊してね」

 慎重。その言葉を雨露は強調して言う。
 それにむっとしたのか泡沫は、解ってると腹に響く低い声で返答をした。
 バサッと羽音をさせ空へと飛び立ち、一つ弧を描いてから、人封じが施された岩の丁度真横に砂を巻き上げ降り立つ。
 それには溜まらず翡翠と雨露はげほげほと咳き込んだ。
 そして、耳をつんざくような、辺りのものを震わせるような、そんな鳥の声が響き渡るとほぼ同時に、岩が砕け散った。

「ご苦労様、泡沫。」

 声を掛ければ、役目を果たした泡沫は仮の姿。雨露の姿になってから、光を発して紙に戻っていった。

「よし。それじゃあ行こうか」

 雨露は慣れているのか否か、恐れなく洞穴の中へと足を一歩一歩踏み入れる。
 翡翠もその後をついて、洞穴の中へと足を踏み入れていく。



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