其ノ二十二
 

「人封じは、人を閉じ込めるときに使う術で、昔では妖怪に生贄を捧げるときに、黒巫女が使っていた術なんだよ。で――」
「待て。黒巫女ってなんだ?」

 話を中断された事が気に障ったようで、雨露は顔を少々歪ませながら説明する。

「黒巫女っていうのは、簡単に言うと禁術に手を染めたり、妖怪に自らの魂を差し出して力を得た巫女のこと。まあ、理にかなっていない巫女達だね。話戻すけど大丈夫?」

 不機嫌そうな声に、翡翠はああ、とだけ口に出した。

「で、無理に逃げようとして、その人封じが施された領域から出たり、今回の場合は岩に触ったりすると、跡形もなく消えるって術。だから禁術にされてるって訳。ただ人を閉じ込めるだけなら禁術にはしないからね」

 だが雨露はここまで説明をし、なぜだか急に違和感に襲われた。だが、何が違和感として頭に引っかかっているのかが謎だ。
 まるでその記憶だけを抜かれたかのように。

「で、どうすれば中の子供は助けられるんだ?」

 雨露は考え込んだまま反応を示さない。
 疑問に思った翡翠は何度か呼んだのだが、雨露には聞こえていないようだった。
 反応してくれないのなら埒が明かない。
 そう思い、翡翠は雨露の肩に手をそっと置く。



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