其ノ二十一
式がばさりと羽音を立て洞穴の前へと降り立つ。
「解」
翡翠が式紙から下りた事を確認し、雨露は短い言霊を唱える。
雨露のその声と共に、式は一枚の紙へと戻った。
「うーん…… これは確かに、端から見ればただの洞穴だね。でもこれはただの洞穴じゃ無い」
「どういう事だ?」
翡翠は解らないという風に首を傾げる。
「人封じが施されているんだ」
「人封じ?」
そう言われても、その類にあまり詳しくない翡翠は、新たな疑問が出来るだけだった。
「人封じは禁術の一種で……って流石に禁術くらい解るよね?」
「いや、全く。この類のものには今まで全然触れたことが無くてな……」
雨露ははあ……と溜め息を一つ吐き、禁術の事について話し始める。
「禁術は、この辺りの国全てで禁止されてる呪術の事。主に人に害を成すものや、自然を破壊するもの。時を歪ませるもので、禁術の一種なのが人封じの術。ここまではいい?」
一度話を切り、頭に入ったかを尋ねる雨露。
翡翠が頷いたのを確認し、雨露は続けた。
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