其ノ二十
 

 丁度夕日が見え始めた頃、雨露は翡翠と待ち合わせている場所へと辿り着く。

「あ、翡翠」

 そこには既に翡翠は居り、何やら考え込んでいるようであった。

「考え込んでるみたいだけど、何か見つけたの?」

 雨露は彼にそう問い掛ける。
 翡翠の目は元々紅いが、夕日が反射し、更に紅くなった彼の目がキラリとこちらへ向いた。

「いや、な……。西側にある洞穴(ドウケツ)から子供の声がするのだが、大岩が邪魔で入れないんだ。真新しい呪札も貼られていてな、見た感じも触った感じもただの岩だった……。式紙にも手伝ってもらおうとしたのだが、岩に触った瞬間炎を出して燃え尽きた」
「まあ燃え尽きたっていうのは感じで解ったけど……。岩を触ったらって……。うん。それは気になるね……。行こう翡翠」

 歩いて数刻は掛かってしまうとのことだったので、鳥の形をした式で移動する事にした。もちろん先程の式と同じように真っ白で顔には“式”とだけ書かれた面を付けている。

「式紙って便利だな」
「長く使ってると疲れるけどね」

 そう、式紙は前にも言ったように霊力を実体化させるもの。長く使っていると頭も体も疲れるのだ。その使っている式紙が大きければ大きい程に。
 そんな会話をしていると前方に翡翠の言っていた洞穴らしい場所が見えてきた。



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