其ノ十六
 

 これだから蛇は……。雨露は軽く溜め息を吐く。
 そう、胴が長い。素早い。自由自在。先程出した面倒な理由はこの三つだが、まだ一つある。
 異常なまでの生命力だ。真っ二つにされていたとしても、動く事を止めようとしない。
 頭が無くなってもだ。頭が無くなっていることに気づいていないのではないかと思えるほどの動きを見せる。

「本当に、面倒だなっ!!」

 もう一度、札を貼ろうとしたその時。ざしゅっという音を立て凄まじい勢いで蛇が真っ二つに割れる。
 そして遅れること数秒。切れ口から血が吹き出した。
真っ二つに割れてもうねうねと動く、血に染まった真っ赤な蛇。
 その仕上げは雨露がするしか無いだろう。
すたすたと蛇に歩み寄り札を貼り付け言霊を発す。

「妖怪退散。さようなら、僕たちの勝ちだよ」

 耳をつんざくような断末魔と共に、蛇は跡形もなく砕け散り、それと同時に嫌な邪気も晴れた。

「翡翠。行くよ。…………翡翠?」



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