其ノ十四
妙に肌寒い村の中を一人歩いていく。
いくら仕事で妖怪退治やらをする為に、沢山このような場所に出向いているとは言え、こんな薄気味悪い場所に慣れることはまず無い。
だが、雨露は怯える事などはせず、すたすたと奥へ奥へと進んでいく。
少し進んだ所で溜め池が見えた。
魚が腐ったような生臭い臭いが漂っている。しかも、それは底無し沼だと見間違えるようなどす黒い色をしていたのだ。
「引きずった痕……」
溜め池から田んぼに向かって何かを引きずった痕がある。
これで何となく察しがついた。
この村に居る妖怪は蛇の類であろう。
これが当たっていると面倒だな。
蛇との戦闘を雨露はあまり好まない。
胴が長いのにも関わらず、動きが素早いからだ。それに自由自在に身体を曲げられる。それは本当に面倒くさいものであった。
そんな事を考えながら、浅く窪んだ痕の真横を歩いていく。一歩一歩踏み出していく度に、鼻が曲がりそうな臭いが強くなる。
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