其ノ七
本当に大丈夫なのだろうか。止めた方が良いのではないか。
翡翠はそう思い不安になりながらも刀を鞘ごと腰から引き抜いた。
雨露は持つ前に刀を眺める。刀は誰でも持っているような普通の真っ黒な鞘に収められており、あまり派手な装飾ではない。柄だってそうだ。鞘同様、無駄な装飾は一切無い。端から見れば妖刀ではなくただの刀のようにも見えた。
やはり妖刀使いとは嘘なのだろうか。
そう思いながら刀に手を伸ばし触れる。
何の変化もない。やはりただの刀だったのだ。
雨露はそう思い、残念そうな顔をする。
だが、翡翠が手をはなした瞬間。
「っ!!」
刀から酷い邪気が溢れ出てきた。電流が流れるようなビリビリとした感覚に吐き気を覚える。
辛うじて自分の害にならないよう雨露は邪気を浄化する。だが、雨露の霊力を持ってしても、完全には浄化が出来ない。
僕がもしただの人間だったら? そう考えただけでゾクリとする程のものだった。
「雨露、大丈夫か?」
そう言い翡翠は刀に手を添えた。彼が触れた途端に、先程までのはいったい何だったのかと思う程、刀からの邪気がスッと消えた。
「あ……、一応」
雨露は疲れた様子でストンと翡翠の隣に腰掛けた。
あれ程までの邪気を浄化していたのだ。どれだけ霊力を使ったか。解らなければ、考えたくも無い。
「もしよければ、教えて欲しいんだけど……。あのさ、これ何の妖怪から打ち出してもらったわけ?」
これほど強い邪気なのだ。そんじょそこらの妖怪では無いだろう。
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