綺麗な華には「毒」がある
目の前の少年は何故こんなにも色っぽいのだろうか。自分より年下、いや、同じ男だとは思えない程の妖艶さがあった。
色を孕むその目で見られれば、ゾクリと恐怖が背筋に走る。
不意に、少年が紅のさされた口を動かした。
「お兄さんさぁ、本当は、男にこれっぽっちも興味ないんだろう?」
図星を指され顔を背ければ、くすくす、という控え目な笑い声。
「そんくらい顔で解る」
そう、実際俺は男に何て興味は無い。可笑しな友人に
「最近見世出しされた、ちょっとばかり口は悪いけど別嬪さんがいる」
と誘われ付いてきてみれば、遊女屋では無く男娼屋で、その別嬪さんというやつが待つ座敷に無理矢理入れられたのだ。
「まあまあ、そんな怖い顔しなさんな、ってなあ。実際、抱いてみりゃあ癖になるかもしれないぜ?」
少年は、またもやくすくすと笑う。そして、しゅるりと布の擦れる音を立て、前で結ばれた帯を外した。その動作さえも妖艶で、目、いや、脳味噌に悪い。
首筋、鎖骨と指を這わせてから、ゆっくり、ゆっくりと焦らす様に、ぱさりと身に纏う煌びやかな着物を脱いでいく少年。その何とも言えない背徳感に、ただただ溺れていく。
一度触れれば其処からどんどん麻痺していくそれは、強力な毒の様でもあった。
勿論、解毒剤なんて物は無くて、一度麻痺した感覚は、そのまま残る所か日に日に酷くなって行くのだ。
綺麗な華には「毒」がある
―2015.10.12