拍手*寂しい/武市さん


「少し散歩でもしに行こうか?」

ふわりと柔らかく笑って武市さんが言う。
部屋に戻ってよそ行きの着物に着替えて、軽くメイクをしていると襖の外から声がした。

「用意は出来たかい?」

「あっごめんなさい武市さん、入って少し待ってて貰えますか?」

から、と襖が開くと武市さんが静かに入ってくる。
そのまま入口近くに座ってじっと待っていてくれた。

「ごめんなさい、すぐに支度しますから」

「ああ、急がなくていい」

そうは言ってくれたものの、しばらくすると武市さんがこちらへやって来る。隣に座り、ふにふにと私の頬を突いてきた。

「?武市さん」

「相変わらず君の頬は柔らかい」

「?」

「僕の為に着飾ってくれるのは嬉しいんだが、あまりに君がこっちを向いてくれないものだから」

「え…」

「少し、寂しいかな?」

「えっ、え、」

「顔、真っ赤だよ?」

「た、武市さんっ」

「やはり君はそのままでも十分可愛いよ」

「〜っもう、わかりました!行きましょう!」

「いいの?」

「いいの?って…」

そんなに恥ずかしいことばっかり言われたら化粧なんかしてられないよ!










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