手のかかる彼女
「ユーリスっちょっと待っ…!」
ガツン!
「きゃっ」
ユーリスを追い掛けていたら目の前に迫った看板に気付かずに思いっ切りおでこをぶつけた。ガツンって言ったよガツンって!
じんじんするおでこをうずくまって押さえていたらいつの間に近付いてきたのかユーリスがその手を外した。
「ちょっと…大丈夫?あーあ真っ赤だ」
痛くないようにそおっと触れるユーリスの手はひんやりしててとても気持ちがいい。
「ユーリスの手冷たいー」
「腫れて熱もってるからね。酒場に戻ってマナミアに治してもらおう」
「うん…」
おでこに手を当てたままのユーリスが手を貸してくれて立たせてくれる。立ち上がったところでおでこに当たっていたユーリスの手がそっと視界を覆った。
「え…」
一瞬だけおでこに触れた柔らかい感触。
手を外された時にはユーリスはもう後ろを向いて私の手をぐいぐいと引っ張る。
「わっちょっ…」
「早く酒場に帰るよ」
ぐいぐいと引っ張る力は強いのに手を握る力は弱い。
揺れた銀色から覗いた耳が真っ赤になってて私は思わず笑顔になってしまった。
「僕も回復魔法習得しようかなぁ」
「え?」
「どっかの誰かさんがいつも怪我ばっかりするからさ」
「それ…私のこと?」
「さあね、自分で考えたら?」
手のかかる彼女
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