嘘でも冗談でも本気でも嫌いなんて言えない
奇兵隊の稽古が終わって昼ご飯を食べた後、晋作さんと桂さんと三人でお茶を啜っていた。
そんな中、私はずっと気になってたことを聞いてみた。
「あの、晋作さん」
「ん、なんだっ!オレ様の嫁になる覚悟が出来たか!」
「違います。そうじゃなくて…」
「いつもながら、否定が早いな!」
「もう、晋作さん真面目に聞いてっ」
「わかったわかった、そうむくれるな。可愛がってやりたくなるだろう」
「まっ…!またそういうこと言う!」
「紘さん、それで晋作に話したいこととはなんなんだい?」
「あっそうだった!あの、前から思ってたんですけど、晋作さんの刀、長くないですか?歩いてるのを見てるといつか引きずりそうで…」
間。
そう言っていいくらい一瞬時が止まる。やがて桂さんは肩を震わせて笑いを堪え、晋作さんは真っ赤な顔で立ち上がった。
「お、お、オレは小さくないぞっ!」
「え?」
「し、晋作…それじゃ墓穴だろう…」
桂さんはお腹を抱えて前のめりになって必死に笑いを堪えてるし、晋作さんは少し涙目で肩で息をしてる。
あれ、私もしかしてなんか悪いこと言っちゃったのかな…
「あの、晋作さんってもしかして身長気にしてるの?」
「…っくく」
私のその発言に桂さんが堪え切れずに吹き出した。
「小五郎笑うな!オレは小さくないぞっ!中岡の方が小さいっ」
「えっでも慎ちゃんとあんまり身長変わらないですよね?」
「…!」
「は、ははっ」
「小五郎!!」
「あの、でも晋作さん別に小さくないと思いますよ」
「気休めは止せ…逆に辛い…」
「だ、だって私よりは大きいもん!」
「紘…それもそうだな!」
急に笑って晋作さんが座ってる私の腕を引き上げる。腰に腕を回してもう反対の手を私の顔に添えた。
「それにこのくらいの方が、きす、しやすい」
「っ…晋作さんのばかっ!きら…」
「きら?」
「嫌い…じゃ、ない」
「ははっ本当にお前は可愛いなっ紘!」
ぐりぐりと頭を撫でられて御機嫌な顔で晋作さんが抱きしめてくる。
結局、嫌いになれない。
嫌い、だなんて、
嘘でも冗談でも本気でも嫌いなんて言えない
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