くちびるから愛届ける



「久しぶりの京じゃー!」

褌一丁と言うあられもない格好で龍馬さんは甲板で叫んでいた。
周りを見ればまたか、とかいつものことだ、とか仕方ないっスねとか聞こえて来る。
いやいやいやいや、みんな止めないの!?
私は近くに放られていた龍馬さんの軍服の上着を持って背後からずんずん歩み寄る。

「龍馬さんっ」

バサッと肩に上着をかけると龍馬さんが振り向いた。すごくにこにこしながら。

「紘!どうしたんじゃ?」

「どうしたじゃありません。なんて恰好してるんですか!風邪引いちゃうでしょ!」

「ワシを心配してくれるがか」

「当たり前ですっ」

「さっすがワシの選んだ女子じゃ!」

「きゃああっ」

龍馬さんがガバッと私に抱き着く。
その恰好じゃセクハラだよ龍馬さん!
あわあわとしていると頭の上でごんっと音がした。

「何?」

「痛いのう〜武市」

「紘さんが嫌がっているだろう」

顔を上げたら龍馬さんの頭を鞘に納めたままの刀で殴ったらしい武市さんが立っていた。

「紘嫌じゃったんか?」

「嫌って言うより…心配なので早く着替えて欲しいです」

「そんな可愛い顔で言われたら断れんぜよ」

ちょっと寂しそうに笑って、龍馬さんはスルッと私の肩から手を離して船室に向かっていく。
もしかして嫌だと思ってるって誤解されたかな。びっくりしただけなんだけど…
私は武市さんにお礼を言ってそのあとを追い掛けた。

「龍馬さん?」

船室を開けると龍馬さんはズボンとシャツを着込んだところだった。

「どうしたんじゃ?」

「あの…私、嫌だったわけじゃないですからね」

「何がじゃ?」

「その…抱きしめられるの。嫌って言うよりむしろ嬉しいですし、その…」

「紘」

ブーツを履くために座り込んでいた龍馬さんがこいこいと手招きする。
近付くとぐいっと抱き寄せられて胡座をかいた龍馬さんの足の上にお姫様抱っこのような感じで座らされた。

「わかっちょる、気にしちょらんよ」

龍馬さんは優しい顔でそう言いながら頭を撫でてくれる。
何だか気恥ずかしくなって俯くと龍馬さんの手がそれを止めた。

「ん…」

唇が触れて、手の平が体を滑る。
キスされながら抱き寄せられて、幸せに酔ってしまいそうになる。

「…口吸いの後の紘の顔は艶っぽくて困るきに」

「え?」

「もっとしたくなっちゅうが」

「んっ」

そう言ってまた触れた唇は、今度はすぐに離れない。
触れて、貪って、甘噛みして。
思う存分堪能したのかやっと解放される。

「ん…、龍馬、さん…」

「…紘、可愛え」

あ、また塞がれた。









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