キスをして 噛み付いて くちづけて
縁側で月を見ながら盃を傾けていると、後ろから聞き慣れた、愛しい愛しい声が聞こえた。
「龍馬さん?」
キスをして 噛み付いて くちづけて
振り返ると風呂上がりじゃろうか、手ぬぐいを首にかけた浴衣姿の紘が立っていた。こいこいと手招きすれば大人しく寄ってきて、すとんとワシの隣に座る。
可愛くて仕方ないのう。
「龍馬さん、まだ髪濡れてますよ?」
紘が自分の手ぬぐいでワシの髪をわしわし拭く。そういう紘の方がまだ濡れているし、髪が首筋や頬に張り付いて妙な色香を醸し出しているんじゃが、それに気付く気配はない。
「紘の方が濡れちょるよ」
ワシの頭を拭いていた手ぬぐいを取って紘の頭を拭いてやる。さらさらの髪は水分を含んでいて、手ぬぐい越しにワシの指に絡まる。
じっとこっちを見詰める紘の目に引き寄せられるように、顔が近付く。
ぱさりと縁側に手ぬぐいが落ちた音が耳に届いた時には、ワシは吸い寄せられるように紘にくちづけちょった。
紘の柔らかな唇に滑らせるように触れ、すぐに離して今度は噛み付くみたいにくちづける。
少し乱暴で強引に唇を貪って、息継ぎのために離した唇を今度は味わうようにくちづけた。
ワシの自分勝手な口づけを必死に応えて肩で息をする紘はまっこと愛らしく、愛しい。
「ん…お酒の味がする…」
「紘の唇は甘いぜよ」
「もう!龍馬さん!」
「それだけ紘が可愛くて可愛くて仕方ないんじゃ」
ぎゅっと抱きしめて呼吸が整うのを待って、また口づけた。
愛しくて、愛しすぎて、この衝動をどうにかする術が思い付かんくらい好きじゃ。
紘の体が縁側に向かって徐々に倒れていく。
酒の盃がかたんと倒れる音が月明かりの静かな夜に、小さく響いた。
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