そしてお前に出逢えただけで…



奇兵隊を作った時から、俺は日本の為に命を捨てると決めていた。
戦場で散らす命なのだと、そう決めていた。
でも今は。
紘と出逢って、俺は。
コイツの為になら命は惜しくないと思った。
コイツが生きた平和な未来の為に、命を捧げるのも悪くない。
けど泣くから。紘が、泣くから。
泣き顔は見たくない。出来るなら笑っていて欲しい。ずっとそばで笑顔を見ていたい。
だって紘は、笑った顔が何より一番可愛いんだ。
だから、紘が泣くなら、精一杯生きてやる。
俺が必死にもがいて生きることでお前が笑うなら、それでいい。



昼下がり、俺は紘の膝に頭をのせていた。
所謂膝枕と言うやつだ。
紘はずっと俺の頭を撫でていた。にこにこしながら撫でている。
その笑顔を見ていると無性に抱きしめたい衝動に駆られるのだが、起きようとすると紘が怒る。
その少し拗ねたような唇が可愛くて今度は口づけをしたくなる。
足が痺れるだろうと言っても、そうしたら晋作さんが部屋まで運んでくれるでしょう?と笑う。
それすらもいいかもしれない、と思うのだから最早重症だ。

精一杯の抵抗、と言うか何と言うか。
俺は紘の腰に腕を巻き付けてぐいぐい顔を押し付ける。
途端に紘の慌てた声が聞こえたがやめてなどやらん。
お前がさっきから俺の髪を触っているように、俺だって紘に触れたいんだ。
ぎゅうーと抱きしめて顔を埋めると紘が観念したように俺の頭をぽんぽんと叩いた。
…子供扱いされてる気がするのは気のせいか?
埋めていた顔を上げて、膝の上から顔を見る。

「なぁ紘」

「なぁに?晋作さん」

さらさらの髪が肩から滑り、俺の頬を擽る。
何が楽しいのか紘はくすくすと柔らかく笑っていた。
なんとなく声も甘い気がする。可愛くて仕方ない。
ふわふわと顔のすぐ上で揺れる髪を掴んで口づけを落とし、起き上がり紘に迫る。顔をすぐ近くに近付けると後ろに逃げようとするから、腰に手を回して引き留めた。

「ダメだ」

「し、晋作さんっ」

もう夫婦になったと言うのに今だに顔を赤らめる紘が可愛くてどうしようもない。

「紘、お前は本当に可愛いな」

「な、何急に」

「急じゃないぞっいつも思ってる」

「〜っわかったからっ顔近いよっ」

俺の胸の前に手を突っぱねて離そうとする。その手を空いた手で封じてしまう。
鼻先がくっつくくらいに近寄って、紘はぎゅっと目をつぶった。
本当に可愛い。もう、どうしてやろうか。

「逃がしてなんかやらん」

そう言ってから、我慢出来ずに口づけた。
好きだ。
好きで好きで好きで。
もうお前のことしか考えられない。

お前の為に生きてやる。俺の残りの命は、全部お前にやる。
だからいつまでも笑っていてほしい。
…俺の、すぐそばで。









そしてお前に出逢えただけで…

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