どうしたら真っ赤になった顔をごまかせるだろう



「龍馬さん、龍馬さん、龍馬さん!」

私はバタバタと龍馬さんの部屋に駆け込む。
部屋で書き物をしていた龍馬さんは私の姿を見ると手を止めて振り返った。

「なんじゃ?どうしたんじゃ紘そがな急いで」

「龍馬さん、手の大きさ比べしましょう!」

「大きさ比べ?」

「はい!」

元の世界では、私は人より指が長いらしくて、それが結構自慢だった。
それを思い出したら誰かと比べっこしたくて仕方なくなって、私は龍馬さんの部屋に駆け込んだのだ。

「元の世界じゃ私手大きい方だって言われてたんですよー」

「ワシには小さい可愛い手じゃと思うが」

「とにかく比べっこしてください!」

はい!と手を広げて龍馬さんの前に出すと龍馬さんが苦笑いをしながら手を近付けてくれる。

「じゃが…ワシが勝つと思うぜよ」

「わからないじゃないですか」

「ワシは紘より年上じゃし…何より、男じゃから」

そういった龍馬さんの顔はすごく真剣で、真っ直ぐ人を射抜く目をしていた。
痛いくらいの眼差しに見詰められて重ねられた手はやっぱり龍馬さんの言う通りで、その大きな手が指の腹を滑り、指の側面を撫でるように握り込まれそうになって、思わず手を離した。

「あーあ!負けちゃった!」

努めて明るく言って、私は部屋を飛び出す。襖を閉めた廊下でドキドキとした心臓を落ち着かせようとしていた。
それまで年上の優しい笑顔のお兄さん、だった龍馬さんが急に男の人に見えた。
強い視線も、なぞられた手も。びくっと震えてしまうくらいにじれったく触られて、意識しないわけがない。
顔が熱い。
私はぺしぺしと頬を叩きながらそっと部屋に戻る。
ドキドキしていた足は少しふらついたけど、頑張って踏み止まった。
でも、










どうしたら真っ赤になった顔をごまかせるだろう

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