今日も明日も。



「おはようさん武市、紘はまだなんか?」

「ああおはよう龍馬、どうやらまだ起きてないみたいだな」

「そんじゃワシ起こしてくるぜよ」

「わかった」

朝食を食べる為に集まる部屋に行ったが紘はまだおらんかった。早起き勝負するって言い出したがは紘なんじゃが、相変わらずおねぼうさんじゃ。

「紘ー入るぜよー」

襖の外から一応一言かけて中に入ると、紘はまだ布団の中ですやすや眠っちょった。

「紘、朝じゃ。起きんと朝餉が冷めるぜよ」

枕元に胡座をかいてさらさらの髪を撫でてやる。ん…と一瞬身じろいだがまたそのまま寝入ってもうた。
無邪気な寝顔が可愛くて、起こすのが忍びないぜよ…。
髪からそのまま手を滑らせて頬を撫でる。無防備に枕元に出ている手をそっと握ってワシはごろんと横になった。
もうちくと、眺めてからでも大丈夫かのう…。





「龍馬遅いぞ、いつまでかかっている」

僕が襖を開けると龍馬は紘さんの手を握って寝入っていた。全く…なんで起こしにいってお前が寝ているんだ。龍馬の頭を叩くとハッと目を覚ました。「た、武市…?」

「何お前まで寝ているんだ龍馬」「あーワシ寝とったんか。こん子の可愛い寝顔見ちょったらちくと眠くなってのう」

「惚気はいいから早く起こせ。せっかくの朝餉が冷める」

「おお!そうじゃった!紘ーそろそろ起きんと」

ゆさゆさと体を揺すってやると紘がんん…と身じろぐ。さらに揺するとようやく目を開けた。

「ん…」

「おお紘、起きたか」

「んー…」

「まだ寝ているな」

「紘朝餉が冷めるぜよ、早く仕度せんと」

「んー…りょおまさん?たけち、さん?」

「紘起きとるか?」

「これはまだ半分寝てるだろう」

「龍馬さん武市さん何してるんスか?朝餉冷めちゃいますよー」

開けっ放しの襖から中岡と以蔵が顔を覗かせた。

「しん、ちゃん…?」

「姉さんまだ寝てたんスか?」

「先生、ここは龍馬に任せて先に召し上がられては」

「いぞー……おはよお」

「!」

「!」

「!」

「!」

武市に話し掛けた以蔵を見て、紘が花のように笑っておはようと言った。
以蔵は顔を赤くして早く来いっと言い捨てながら廊下に出ていく。
ワシもまだおはようって言われてないんじゃが…以蔵ずるいのう…

「紘ワシにもおはようって言っちょくれ」

「姉さん俺にもっ」

「挨拶は皆にするものだ、紘さん」

「んー…おはよおございます、りょおまさん、たけちさん、しんちゃん」

ペこりと頭を下げてからにこーっと笑った紘に自然と皆笑顔になる。うんうん、やっぱり今朝もワシの紘は可愛いのう!

「じゃあ龍馬、僕と中岡は先に行っているから紘さんを頼んだぞ」

「おお、ワシらもすぐ行くぜよ」

「りょおまさん?」

「紘もう朝餉の時間じゃ、はよう仕度せんと」

「えっわっ寝すぎちゃった…」

「そうじゃ、早起き勝負は今日もワシの勝ちじゃ」

「また負けちゃった…」

「今日もワシのお願い、聞いてくれるか?」

「…なんですか?」

「紘から朝のきっすじゃ!」

「りょ、龍馬さんっ」

「だめなんか?」

「だめ…じゃ…ないですけど…」

「じゃあほれ、早くせんと皆に怒られてしまうぜよ」

「〜〜っ…じゃあ、目つぶってください」

「ん、こうかの」

赤い顔した紘の前で目を閉じる。するとしばらくしてさらさらした髪が鼻先を擽った後、頬に柔らかい感触があった。

「…紘」

「龍馬さん、どこに、とは言いませんでしたからねっ」

「ずるいのう」ワシは口を尖んがらせて紘に抗議してみるが、紘は真っ赤な顔を布団で埋めるだけじゃった。

「じゃあ紘、ワシ先に行っちょるき、はよう仕度してくるんじゃよ」

「あ、はい」

立ち上がりながら紘の頭をぽんぽんと撫でるとぱっと紘が顔を上げる。
その隙を逃さず唇を掠め取った。

「っ…りょ、りょ、龍馬さんっ」

「隙あり、じゃ」

早く来るんじゃよーと言いながら廊下に出ると龍馬さんの馬鹿ーと紘の声が聞こえた。
襖を閉める寸前に見えた紘の顔は真っ赤に染まっててまっこと可愛い。
今日もいい一日になりそうじゃ!










今日も明日も。

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