きらい、きらい、すき



何を隠そう私は香水がだーいすき。
それをうちのクラスの白石に言うたらゴミ虫を見るような目で盛大に見下された上に「ありえへん、キモい」と言われた。
あの白石が。
優等生で何でも出来て人気のテニス部の部長で更に爽やかで人当たりもよくボケる時はボケるあの白石。逆ナンされまくる白石。
その白石が私にゴミ虫のような目を向けたのだ、この私に。
しかし何故かその一瞥で彼にころりと私は落ちてしまった。

まあ所謂ギャップ萌ってやつだろうか。









「しーらーいーしー!」
「うわっ」
「うわってなんやうわって」
「お前こっちくんな、香水の匂いで酔う…うぷ」
「しっつれいやなぁ!」

白石の香水嫌いはハンパなかった。どんなに匂いのテイストを変えても白石は嫌がった。
だから私は香水を使うのをやめた。
あんなにすきだったのに、月に何本も買うくらいにすきだったのに。
でもそれでも白石は嫌がった。どうやら私の部屋に香水の匂いが染み付いてしまってるらしかった。
だから次は香水を全て捨てた。まだたくさん入っている新作も、もうからっぽだけど取っておいたお気に入りの香水瓶も全部。
それほどまでに私は白石がすきになってしまっていた。香水よりも白石がすきになっていた。
香水瓶を捨てて部屋を大掃除した。部屋にファブリーズを吹き掛けまくったら酔った。
それでも染み付いた匂いがすぐに消えるわけなくて私は約一年くらい白石に「うわっ」と言われゴミ虫を見るような視線を浴びせられ続けた。
つまり私の恋は叶うそぶりも見せずにあっさりと卒業と言う二文字によって強制終了されたのだった。








「紘、行くで」
「おん」

それから何をどうしてどうなったのか、私は今白石と付き合っている。
高校を卒業して大学に進んで私と白石は再会した。
すっかり香水を使うことをやめてシャンプーの香りを纏っていた私に白石は驚いていたようだった。「ほんとに月城やんな?」と何回も聞かれた。
香水やめたんや、と嬉しそうに白石は笑って俺この匂いめっちゃすきと急接近してきた。
ドキマギと顔を赤くした私に白石は可笑しそうに笑う。
笑いかけられたことなんて中学時代にありはしなかった。
そして私の顔を吟味するかのようにまじまじと見て自分結構かわええ顔しとったんやなと言ったのだ。
そんな再会を経て私と白石はすごく自然な流れで付き合うことになった。





付き合ってからわかったことと言えば、白石は極度の香水嫌いで極度のシャンプーの香りフェチだった。

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