セーラー服に片思い



「ズバリ聞きましょう!男子として、制服の夏服と冬服どっちが好き!?」

お前はどこの丸尾君だ、と言われそうな言葉遣いで詰め寄った私に男子は口々にこう答えた。

「夏服だな」

「夏服ですね!」

「夏服なのね〜」

「夏服がいいよねクスクスクス」

「うぃ、夏服がいいなっつ…」

「ダビデー!」

「どわっ!バネさんまだ言ってない!」

「えー…何で?」

「何って…」

『布地が薄いから!』





セーラー服に片思い





「うわぁ…男子ってみんなケダモノなのね、よくわかった」

私が体をぎゅっと抱き締めて席を立つと後ろから誰かに両肩に手を置かれる。
振り向けばやたら爽やかな顔をしたサエで、そういえばサエは答えてなかったなとはたと思った。

「そうだ、サエは!?冬服のが可愛いよね!」

「いや、俺も…夏服かな」

「え〜っ!期待してたのに!裏切られた!騙された!サエのペテン師!」

「だって、夏服のが紘に似合うから」

「…へ?」

「似合うだろ?」

ほら、とサエは私の赤いタイを摘む。
ぽかんとしていると周りから笑いが零れた。

「かっかっか!そうだよなーサエは紘が好きだもんなー」

「うん」

「バカ!そんなわけな…ってえ!?」

「俺紘のこと好きだよ」

「あ、ありがとう、?」

「サエ、伝わってないのね」

「はは、困ったなあ」

「さて、邪魔者は退散するか!行くぞダビデ」

「サエさんが告白を濃く吐く…ぷっ」

「ダビデテメェ!」

「うわっちょっバネさんタンマ!」

賑やかに部員がコートへと戻って行ってしまう。
あとに残されたのはサエに肩をしっかり掴まれた私とサエだけで、
試しに逃げてみようと一歩足を後ろに踏み出したら自慢の動体視力でバッチリ目撃され、
乱暴に肩がサエの方に引かれる。
自分の動こうとした方と反対に引っ張られたせいでバランスが崩れてサエに倒れ込み、しっかりと支えられてしまった。

「あ、ありがとう…ごめん」

「紘」

離れようと手を突っ張っても体が離れない。
あれ?何かこれ嫌な予感しない?
ダビデは出て行く時何て言ってた?

「紘、俺は」

さえさんがこくはくをこくはく

こくはく…
って告白!?

マズい、これは非常にマズいぞ!
だって私サエのこと友達以上に考えたことないんだから!

「紘が」

「うわー!ちょっと待ってサエタンマ!」

「どうしたの紘」

「あのね、やっぱりこういうのはまだ早いと思うのよ。
そう中学生のお付き合いと言ったらやっぱりまずは交換日記からよね!
それでグループ交際、Wデート!
なかなかどうして手も繋げない初々しい二人の物語って言うの?」

「…紘」

「やっぱりそういう歴史を経てですね、
抱き締めたりとかそういうのが発生するわけですよね!」

「紘、」

「だからやっぱりそのまずは交換日記よ交換日記!
とりあえずノート買ってくるとこから始め」

「紘!」

「…なきゃ、はい」

「もうわかった、俺が焦りすぎたよ。ごめんな」

そう言ってサエはそっと体を離して頭をポンポンと撫でた。
ああ、これだよこの距離感。
サエとはこういうのがいいんだ。

「でも心配なんだ。紘モテるから、早く俺の物にしておきたくて」

「はいぃ?私がモテる?ははっないない!サエじゃあるまいし、天地がひっくり返ってもない!」

「…おまけに鈍いしね」

「?何か言った?」

「いいや、何も。さ、俺達も練習に戻ろうか」

「うん!」

「…ゆっくり、か。もうすぐ三年の片思いってゆっくりじゃないのかな」

サエが眩しい太陽を見上げながら呟いた言葉を風の音で聞き逃した。










後日、サエが真新しいノートを持ってきて交換日記をしようと言い出すなんて私
はこの時これっぽっちも思っていなかった。


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