愛と恋は大概が擦れ違う
「土方さん、おやすみなさい」
いつもと同じような顔して、でもどこか寂しそうな様子のあいつの顔を思い出す。
なんであの時どうしたと一言聞いてやれなかったのか。
今更後悔したって遅いけれど夕べの自分を殴り飛ばしたくなった。
朝起きたらあいつがいなかった。屯所中探しても誰に聞いても見てないと言われた。
屯所の近くを見てもいない、急に嫌な予感がした。もう会えないような、そんな予感。
そう思った途端背中を這ってくるような不安を振り払うように俺は飛び出した。
誰かが導いてくれてるみたいに俺は一直線に走った。この先にいると何故か確信めいたものが俺の体を動かす。
徐々に人通りは減り、寂しげな神社が見えてくる。そこに見えた、あいつの背中。
「紘!!」
気付いたら叫んでいた。何故か消えそうなあいつの腕を引いて腕の中に閉じ込める。
小さな体はつい数日前抱きしめたものと何ら変わっていなかった。
「土方さん…」
「ばっかやろ…心配かけるんじゃねぇよ…」
頭を埋めさせるみたいに抱きしめると腕の中からごめんなさい、と聞こえた。
「どこにも行くな。俺の側にいろ」
「土方さん…」
「好きだ、紘」
あいつの頬に手を滑らせるとぽろっと瞳から涙を零した。そして俺の手に自分の手を重ねてぽろぽろと泣きながら言った。
「私も好きです…土方さん」
俺の胸に顔を埋めるように飛び込んできて、しゃくりあげながらずっと側に居させて下さいと泣く紘を俺は二度と離してやんねぇぞと抱きしめた。
愛と恋は大概が擦れ違う
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30000フリーリクエスト・はむは様へ。
土方さんを書くのはバレンタイン以来だったのでちょっとドキドキしました。
未来に帰ろうとする小娘と、両思いの土方さんということで気持ちを伝えていないがためのすれ違いにしてみました。
土方さん書き慣れていないのでキャラが違ってたらごめんなさい。
はむは様のみお持ち帰り可能です。
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