雪原に沈む独占欲



「うう…寒い…」

もぞもぞと布団の中で寝返りを打つ。今朝は馬鹿に寒い。布団から出ている鼻先が冷える程だ。
上掛けを被ったまま庭に続く障子を開けると目の前に驚くべき光景が広がっていた。

「うわぁ…」

一面の銀世界。
雪は音もなく降りしきり、深々と積もっていた。
途端に目が覚めて私は大急ぎで着物に着替える。

そしてそっと庭に降り立てば積もったばかりの雪がさく、と軽やかな音を立てた。

「雪じゃー!」

すると何処からかばたばたと足音がして龍馬さんと、無理矢理起こされたのか少し眠そうな慎ちゃんが姿を現した。

「あ、おはようございます」

「おお!紘さんに一番を取られてしまったがか!」

「あはは、ごめんなさい」

雪の庭に降りた龍馬さんはえいがじゃえいがじゃとにこにこ笑う。
眠そうな慎ちゃんも雪を掬ってすごいっスねぇと笑った。





「何をやっているんだ」

三人で雪合戦をしていると玄関から回って来たのか大久保さんが呆れ顔でやってきた。
やばい、出迎えなかったの嫌み言われるかも。あわあわとしていると呆れたように私を見た。

「お前は一体何をやっているんだ」

ずんずんと新雪に足跡を残して大久保さんが歩いてくる。そして私の肩に自分の羽織をかけた。

「え、」

「着物びしょ濡れだぞ」

「あっ」

「相変わらず馬鹿だな小娘は」

そう言いながらひょいっと私を抱え上げた。

「着替えるぞ」

「えっあっ大久保さん!私自分で着替えられますから!」

「駄目だ」

「なんっ…」

「私を出迎えなかった罰に決まっているだろう」

あ、やっぱり根に持ってた。にやっと笑う大久保さんはいつもの尊大な態度で私の制止を無視して縁側へとあがった。

「大久保さん!ちょっと待っ…」

「五月蝿い、今この場でその口を塞ぐぞ」

「えっ…」

龍馬さんも慎ちゃんもいるこの場でそんなことされたら困る。私が口をつぐむと大久保さんが口の端を上げて笑った。

「素直なのは嫌いじゃないぞ」

いや、素直って言うかそれ脅迫ですから!
なんて言えるはずもなく私は抱き抱えられたまま自分の部屋に運ばれ、無情にもその障子が閉められてしまったのである。





雪原に沈む独占欲

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30000フリーリクエスト・モアモア様へ。
雪と龍馬さんと慎ちゃんと大久保どんということで。
ちょっぴりないがしろにされて不機嫌などん。
独占欲が出たどんでお送りしました。
モアモア様のみお持ち帰り可能です。



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