恋しくて恋しくて恋しくて
何回好きじゃと言ったら本気になってくれるのか。
恋しくて恋しくて恋しくて
紘はちょっとどころでなく鈍い。そこが可愛えとこではあるんじゃが、あまりにも気付いて貰えないと流石に困ってしまう。いったいどうしたら本気じゃとわかってくれるんじゃろか。
好きじゃと真っ正面から伝えても、私もです!と元気に答えられるだけで、こんなにも苦労するとは思いもせんかったぜよ。
「龍馬さん?」
頭の悩ませておると襖の外から紘の声がした。なんじゃ?と声をかけると襖が開いてお洗濯物、持ってきましたよと笑う。
「おお!助かるぜよ」
「ここ、置いときますね。あと龍馬さんのブーツも乾いてたので持ってきました」
「ありがとさん、紘はええ嫁さんになれそうじゃのう」
「もう、龍馬さんってば」
少し照れたような拗ねたような顔で言う紘は可愛え。えらい、えらいと頭を撫でてやると子供扱いしないでくださいとむくれる。それでも大人しく撫でられているのが好きじゃ。
「じゃあ私みんなのところにまだお洗濯物届けに行かなきゃいけないので行きますね」
「ワシも手伝うぜよ」
「いいです、龍馬さんはゆっくり休んでてください。昨日遅くまで書き物してたでしょう?」
お昼寝でもしててください、と紘が言った。こん子は…ただの子供じゃと思ったそばから大人の顔をしよる。くるくる表情が変わって目が離せんがよ。
じゃあ、失礼しますと背中を向ける紘の髪が揺れる。
途端に訪れる寂寥感に焦燥感。そして、独占欲。
ああ、好きじゃ、他の奴らのところなんか行かせたくない。
「紘、」
気付けばワシの手は紘の細い手首を掴んどって、
「好きじゃ」
振り返った紘に告げていた。
ああ、何いっちょる。こんな真顔で痛いくらいに見詰めていっちょったら、嘘や冗談じゃ流せん。
頭の何処か冷静な部分がそう警告しちょるが一度口に出した言葉は戻ってなどくれん。
「…あ」
かあっと目を見開いていた紘の顔が朱に染まる。
途端にオロオロしだす紘にこっちが驚いた。
本気じゃと、思ってくれたんじゃろか…?
勝手に手の力は緩み、その隙に紘の手首はするりと抜け出す。
襖までの短い距離を走り、真っ赤な顔で振り返る。
「…みんなにお洗濯物届けなきゃならないから、行きます」
「…嫌とか、逃げたりするわけじゃ…ないですから」
背中を向けた紘の髪の隙間から真っ赤な耳が見えて、廊下をパタパタと走る足音が遠ざかる。
ああ、もう堪らん。
もう一度好きじゃと伝えたら、紘はなんと答えてくれるんじゃろか。
頬が勝手に緩んで、ワシは笑いが止まらなくなった。
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