見下ろすその目が愛おしいから
どうしよう、すごくお腹が痛い。
原因はなんとなくわかってるけど、自覚すると更に痛くなる気がして気付かない振りをした。
「帰ったぞ」
偉そうな大久保さんの声がした。ああ、出迎えに行かなきゃ。また嫌み言われる。今言われたら確実に気分がた落ちになる。
よろよろと壁を掴んで立ち上がる。予想以上に痛いかも。障子を開けて廊下に出る。壁を伝いながら歩いているとズキンッと激痛が走った。
「…った」
思わずそのまましゃがみ込む。痛い痛い痛いいだだだだだだだだ。毎度のことながらほんとこの時ばかりは女と言う性別が憎らしくなる。
そこにずんずんと歩く音、あー間に合わなかった。やばい怒られる。
「おい小娘!何故出迎え―小娘?」
「あ、はは…お帰りなさい大久保さん…」
「おいお前…顔が…」
「良くないのはわかってます」
「違う」
足早に寄ってきた大久保さんが私の顔をあげさせる。普段より眉間にシワが寄ってこわいかお。
「顔が真っ青だぞ」
「そうですか」
「どうした」
「いえ別に」
「別にと言う状態じゃないだろう」
でも原因を言うのは恥ずかしい。未来の言い方で伝わるのかもわからない。というか正直頭が働かない。
「…毎月の、アレ、ですから」
「!」
なんとか伝えると気付いたのか大久保さんが困ったような顔になる。ちょっと焦ってる大久保さんはとてもレアだ。
「…おい」
「はい?」
「どうすれば良くなる」
「どうすればと言われても…」
この時代に薬なんかないだろうから痛みが過ぎ去るのを待つしかないと思う。
何も言わずにいると大久保の手が背中と足の下に回って浮遊感が私を襲った。いわゆるお姫様抱っこに私は思わずポカンとして大久保さんの顔を見た。
「おとなしくしていないと、落とすぞ」
どう扱っていいかわからない、と顔に書いてあるような大久保さんに私は可笑しくなって、大人しく運ばれることにした。
見下ろすその目が愛おしいから
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30000ヒットフリーリクエスト・椎さまへ。
焦る大久保さんとのリクエストで大久保さんを焦らせてみました。何やらやっとルート制作決まったとか…。焦らすなぁ、流石大久保どん。
椎さまのみお持ち帰り可ですー。
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