君欠乏症候群
僕はストレスが溜まっていた。
何でかと言えばもう三日くらい洞窟から出てないからだ。
「しっかしこの洞窟どこまで続いてんだ〜?」
アルガナン伯爵直々の依頼で僕らは洞窟の調査へと赴いた。
しかしその洞窟は予想を遥かに越えて長く、僕らはもう三日も洞窟に滞在していた。
パチパチと燃える火の向こうでセイレンがぶつくさと言う。
もう来た道は見えないし進む先も真っ暗だ。いつ抜けられるかわからないこの状態に気も滅入る。
「そろそろ寝ようか」
苦笑いしたエルザがそう言って僕らは火を点けたまま薄い毛布へと寝転がる。
洞窟の地面はでこぼことしていてお世辞にも寝心地がいいとは言えない。
寝返りを打つと骨が擦れて痛んだ。
「ミシャ?」
「ん?」
「起きてる?」
「うん」
「僕眠れないんだけど、ちょっとだけ散歩付き合ってよ」
「うん、いいよ」
浅い寝息を立てているエルザとセイレンを起こさないようにそっと毛布から抜け出し、ひんやりと涼しい洞窟を歩く。
二人きりになるのも三日ぶりだ。
少し影になっている窪みにミシャを軽く押して追い詰めるとエルザ達が見えないことを確認して顔を近付けた。
ガチッ
「だっ!」
「でっ!」
キスをするはずだったのにぶつかったのは情けないことに歯で、二人とも黙って唇を押さえた。久しぶりだからってこれはない。
「んっ…」
ミシャの手を外して今度こそちゃんとキスをした。久しぶりのそれは覚えていたよりも柔らかくて、唇から快感が背中へと走った。
夢中でキスを交わしているとミシャの手が僕の背中へと回る。
僕も岩壁についていた手を彼女の背中へと回した。
「はっ…」
唇を離してすぐにぎゅうっと腕の中に閉じ込める。
この柔らかい体を抱きしめるのも随分と久しぶりだ。
「ユーリスどうしたの?」
腕の中でもぞもぞと動くミシャがそう聞いて来たから僕は一言だけぼそりと答えた。
「…充電」
君欠乏症候群
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