今日は10月31日、ハロウィーン。
どんなお菓子が貰えるか、どんな仮装をするつもりか、朝から楽しげに騒ぐ子供達の声に混じって聞こえてくるのはなんだか不穏な話し合い。しかもそれはなんとゆきの屋の蔵の中からのようで…?

ジャック・オ・ランタンからご挨拶


ああ、全く持って嘆かわしい、嘆かわしい事この上ない!…何の話かって?ハロウィーンの話さ!

本来ハロウィーンとは万聖節の前夜、魑魅魍魎や死霊に魔女、そんな名だたる悪霊達が人間押しのけ跋扈する特別な夜のことなのさ。昔は人間達もオレ様達を恐れてあえて幽霊に扮しそっと屋内に閉じこもっていたもんだ。
なのに最近のハロウィーンときたらどうだ?トリックオアトリート!なんて言葉の意味すら分かっちゃいないような子供達がお世辞にも怖いともいえない格好でお菓子を求めてかけずり回ってる。あれの何処がオレ様達に似てるって?とんでもない!
その上、懲らしめてやろうとわざわざ出向いてみればオレ様達までそのハロウィーンもどきの参加者と見なされる始末!あんなハロウィーンオレ様は認めないぜ、誰がカボチャのお化けだ!オレ様はジャック。ジャック・オ・ランタン様だぞ!?

…これじゃあだめだ。こんなんじゃオレ様達の威光は地に落ちるばっかりだ、むしろ既に消えちまってすら居るかもしれない。…で、オレ様は考えたのよ、いっちょここらで再びオレ様達の世界を取り戻すしかないだろうってな!
ゆるみきったハロウィーン、そいつを逆手にとり仮装した馬鹿な人間どもに紛れて町に出て、そのままちょいっと世界をいただく寸法よ。恐れる心を忘れた人間どもがオレ様達に勝てるはずもないだろ?
ああ、別に全部奪おうとは言ってないぜ、日本くらいもらえれば十分さ。そしてオレ様達は叫ぶんだ、永遠のハロウィーン万歳、死霊祭万歳ってな!ああ、なんて良心的な死霊なんだろうなオレ様達は!…あ?日本に住む人間はどするのかって?ふ、そりゃまずはこの世から退散して貰って、もう一度あの世においでなすったところで俺達のお仲間に招待するだけさ。いつだって歓迎してやるぜ?

とは言ってもこれは一晩の仕事にはならないだろうからな。今日の目標はまずオレ様達の拠点を作ることだ。ちょうど気の抜けたばあさんの駄菓子屋があることだしまずはこいつをいただくか!オレ様甘い物は嫌いじゃないぜ。幸運なことにばあさんと孫は当日は夜まで菓子をばらまいてるらしいし、オレ様の調べによれば父親と妙なフランス人も出かけているらしい。じいさんと母親はあいにくと残っているようだが…まあ所詮は女に老人、駄菓子屋制圧は簡単なもんよ!

やーはー!今宵はハロウィン、我等の夜だ。魑魅魍魎の、悪魔の夜だ!死こそ誰にも平等さ、恐れおののき怯えるが良い!さあ死霊祭 をはじめるぜ!









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