マンマ・ミーア!







“吸血鬼の子どもを産む”とアリアは云った。その一言はワムウにとって色々な意味で衝撃だった。


まずワムウにとって汐華アリアとはまだ15歳の子どもだった。いくら外見が日本人離れした美貌だとしても中身は外見を裏切っての幼稚さがみられる。

それは彼女の身内だけでなく、主だったカーズに似ているのもあってワムウ自身がかなり甘やかしたせいでもあったが、彼女はいい意味で純粋無垢、悪い意味で世間知らずだった。

到底今すぐ嫁に出すなんて思いもしない。というか嫁に出すとしたら相手の男が戦士として如何にアリアを守っていくだけの力を有しているかをワムウは確かめずにはいられないだろう。神砂嵐の一発や二発、無傷で躱すほどじゃなければ認める気はないが。


そしてもう一つ、彼女は“吸血鬼”と云った。そう、ワムウにとって、吸血鬼とは自分よりも下の生き物であり、それを作り出す仮面を創ったのが、ワムウの尊敬するカーズだ。

ワムウが仕入れた情報から判断して、SPW財団、もしくはジョセフ・ジョースターは残っていた仮面も全て破壊しただろう。恐らくもう二度と聞くことは無いと思っていた言葉を耳にし、ワムウは吃驚する。

幸か不幸か、ワムウは戦士として優れておりどんな状況でも常に冷静さを保つことを心がけていた。それがこの時にも発動する。


「(いや、まて、聞き間違いかもしれない…)アリアよ、もう一度云ってくれないか?」
「……うん。あのね、“汐華”の女はもうすぐDIOっていう吸血鬼の子どもを産んでイタリアで暮らさないといけないの」

(ああ、聞き間違いではなかったのか…)

ワムウは思わず天を仰ぐ。そして思った。

(取りあえずそのDIOとかいう男を殺そう…)


だがふと、ワムウはとある考えに至る。


「なぁ、その運命は避けられないものなのか・・・?」
「え……」

吸血鬼の子どもを産むといっても、子どもとはそう簡単に出来るものではない。どれだけ望んでも出来ない夫婦も世の中にはいるのだ。(勿論逆のパターンもあるが)

要するにワムウはそのDIOとかいう吸血鬼とアリアを会わせなければいいと思った。そのために学校の登下校は必ず日の当たる場所を選ぶように指示し、曇りや雨の日は自分ごと(砂時計)持って外出させる。吸血鬼の活動時間は日の暮れた夜だが、それは同時にワムウの活動時間でもある。

吸血鬼よりも優位に立つ上位個体たる柱の男の中でも、戦闘能力はトップクラスのワムウが本気で迎え撃つのだ。いくら相手が吸血鬼としては優秀でも一度ジョセフとの勝負で油断から敗北を味わったワムウが同じ失敗を繰り返すはずもない。大体戦ってきた年期が違うのだ。

自身の運命を知っているアリアでも、実際の汐華という女性に関してはそこまで詳しい情報もないし、その上原作にはないワムウという最強の戦士が自分を守ってくれる点から当初の不安もどこへやら、すっかり安心し日常生活を送っていた。



だがアリアに偶然アメリカ行きの話が舞い込むのだから、そこで出会うとある人外の科白「人と人の間の『引力』」という言葉への共感をせざるを得ないだろう。




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