マンマ・ミーア!






少女は15歳になった。ワムウとの付き合いも10年近く、アリアはワムウに全幅の信頼をよせるようになる。

アリアは昔から言いようのない既視感を味わっていた。具体的には言えない。が、彼女はそれを知っていた。

何よりもアリアが違和感を感じていたのは自身の姓である。
――『汐華アリア』、それが彼女の名前だ。


違和感の正体に気づいた時、アリアは走った。学校帰り、何気なくいつもは通らない裏路地を通った彼女が見たのは自身より年下らしい不良少年が隣町の高校生を殴り飛ばした瞬間だ。見るからに体格の良い少年が年下と分かったのは、彼女と同じ中学の制服をきて同級生がしきりに「カッコイイ後輩がいる」と騒いでいた少年だからだ。

その少年、『空条承太郎』をその時アリアは初めて見た。

噂通り高身長でラグビーでもしているような強靭な肉体は服の上からでも見て取れる。
だが振り向いた彼と視線があった時、まるでパズルのピースがそろったように全てを理解した。

何故か驚愕の視線を向けてくる彼だったがアリアには彼に話しかける余裕がない。
一気に襲った数十年の記憶は膨大で、そしてそこから予想された未来で抱いた絶望、困惑、恐怖、あらゆる感情を押さえようと必死だった。


整理もままならない。だがアリアは走る。息が切れようと動悸がしようと、走る続けた。


自宅に着いた時すれ違った母に心配されるくらい顔色も悪かったらしい。
それでもアリアはこの言葉で表しようのない感情を聞いてくれる、両親や親友よりも頼れる男に泣きついた。




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