マンマ・ミーア!







DIO視点2


 チュンチュンと小鳥の囀りが鼓膜を震わし、窓から差し込んだ陽射しが朝の訪れをディオに伝えた。愛おしそうに母の頬を撫でる。

 朝日を浴びた金髪はまだ薄暗い室内を照らす日輪のようで、ディオは自身と揃いだった母の髪を一房掴み口づける。白髪なのに不思議な美しさを持つそれに。
上質なシルクの様な髪はいつまでも触っていた欲求に駆られる。朝日に照らされた母はとても40を超えた熟女とは思えない若さを保っていた。下手をすれば20代にも見える。

病に倒れてから一歩も外を歩かないせいかただでさえ白かった肌が陶器の様な白さになり、だがそれが余計に青ざめる顔を引き立てた。
はやくよくなってほしい。心の奥底で解っている事実から目を背け、ただ毎日を母の隣で過ごした。

一度も看病にこない父など等に見放した。母が回復したらこの家から出て行ってやるさ。
母さん、前からお金をためてたんだ。ここを出たら母さんに似合う綺麗なドレスを買ってあげるよ。


夢の中で母さんが歌っていた。何度も何度も歌っていた。
愛していると紡いだ母の口唇を俺のそれで塞ぎたい。舌を絡ませ、互いの唾液を交換して、母さんの、アリアの肌に指を滑らせたい。
嗚、俺も愛してる。そう返したい。



近い未来を夢見て眠る母の頬をまた触れようと髪から手を離すが、


「か、かあ、さん・・・?」


何故だ?冷たい、異様に冷たく固い。母の頬はこんなんだったか?まるで石の様じゃないか。嘘だ嘘だ嘘だ、ほら、早く起きてよ。また寝てもいいけど、起きてその目に俺を映してよ。外でピーチク鳴いている鳥どもよりも綺麗な音で「おはよう」と囁いてよ!!

ぎゅうぎゅうと絞殺さんばかりに抱きしめる。前なら「苦しいわ」って胸を叩いたよね、ほら、苦しいだろ?

俺の方が苦しくなってきたよ。ほら、早く早く早く・・・・っ!!!



陽が沈む夕暮れの色が室内を橙に染め上げ、酒飲み親父が飲みに出かける時間になって真っ暗に染め直されても、母は、アリアは起きなかった。





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