マンマ・ミーア!









「ふ、アリアよ。お前の云った通りだな。後のことは頼むぞ」


あ、兄貴!!!
兄貴分ことダイア―が吸血鬼に敗れた。あ、あのサンダースプリィットアタックに「かかったな!アホが!」と云ったのも悪かった。
・・・っていうか吸血鬼のくせして冷凍法とか反則だろ!?

批難の視線を男に向ければ何故か目を見開いた。
えっ?なに?顔に来る前に食べたおにぎりの海苔でも付いてた?



そんなことを考える彼女を余所に、ディオは!信じられない衝撃を味わっている。
生まれて二十年あまり、彼は今まで一度も恋をしたことがなかった。
恋とは嘗てディオと出会ったばかりのジョナサンが成長する切っ掛けとなったように恐ろしく強い爆発力を秘めている。
そう、ディオに屈しかけたジョナサンがたった一人の少女のために打ち負かしたように!

その衝撃は全身に伝わり、彼は咆哮した。


「URYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!そこのお前っ!!」


指さされたのは・・・私?偶然にも今そこには私しかいない。
ひ、ひ、ふ〜。お、追いつけ、私。あの無駄にピンと伸び何故か小指と薬指をくっつけたよくわからんポーズはかの有名なジョジョ立ちの一種だろう。あの指を逆さに折り曲げることを想像して冷静に!クールに!この見た目に合った雰囲気を維持するのだ!!


『・・・何だ』

あ、よく見るとイケメンだ。そうそう、隣に黒髪美人さんが似合いそうな。
しかも、子安さんボイスだとっ・・・?!!


そしてその声で云われた次の発言に思考が停止した。

「俺のモノに成れ!!」


What?あ、御免録音したいからもう一度・・・ってしまった!そんなものこの時代にはない!?

もはや今の彼女にディオの謂った内容は届いていなかった。
ディオの目には美しい女戦士が憂い気に!悲しそうな眼でどこか彼方を見つめている!その瞳に映りたいと望んでも彼女には届かない。

ジョナサンが横で「アリアにまで戯言を吐くな!」とキレている。
戯言だと?何を言っているんだ。このディオは本気だ。本気でこの女が欲しいと、目があった瞬間この女と俺は出会うべくして出会ったのだと直感した!

今すぐその露わになった白い首筋に噛み付き、内側に蓄えられた甘美な美酒を啜りたい!
死なない程度に味わうと傷跡から垂れる一滴すら無駄にはしない。舌で舐めとり、持ち出した仮面を被せ共に永遠を生きようではないか!
人ですらないディオにはもはや貧弱な人間とは違うのだ!!! あの女・・・アリアと云ったか?アリアを我が妻にし、この世界を支配する!嗚呼、その先はきっと想像できなくほど素晴らしいものだろう!!!


手を差し出したが照れているのだろう。可愛い奴だ・・・どれ、このディオ自ら迎えに行ってやろう。


カツン、カツン、と高い足音がなる。

さあ、この手を取れ!


その時!あろうことかディオによって身体を砕かれたダイア―は首だけになってもまだ生きていた!!
偶然にもバラの花束の中に落ちた彼は、彼が落ちた衝撃で舞い上がった一本を口に咥え波紋を籠める。可愛い妹分に触れようとする邪悪な獣に向かって彼は鼬の最後っ屁のように、その目に突き刺さる勢いでバラを吹き飛ばしたのだ!!


全くの予想外の攻撃!ディオは、人間の急所たる眼球にその波紋入りのバラが突き刺さった。アリアにと伸ばされた手は虚空を彷徨い、もう片方の手で目を抑える。怒りが彼の身体を支配した。昔からの悪い癖でもあるが人間を辞めた今ではより本能に、感情に支配されやすかった。


そのままディオは本来の目的であるジョナサンとの死闘の末、バルコニーから転落する。
波紋が全身を回る前に首を切断した時、吸血鬼となったディオの目には人間では目視できない距離も視ることが出来た。
こちらを見つめるアリアに口端を上げ、聞こえないと解っていても謂わずにはいられなかった。

「必ず我が妻として迎えに行くぞ・・・・!!!」





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